【12月7日 AFP】米軍とイエメン軍は6日、イエメン南部で、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系武装勢力「アラビア半島のアルカイダ(Al-Qaeda in the Arabian PeninsulaAQAP)」にとらわれていた人質の救出作戦を実施したが、人質になっていた米国人フォトジャーナリスト、ルーク・サマーズ(Luke Somers)氏(33)と南アフリカ人教師のピエール・コーキー(Pierre Korkie)氏(57)が作戦中に死亡した。コーキー氏は翌7日に解放されることが決まっていた。

 AQAPは今月4日に動画を公開し、米政府が3日以内に要求に応じなければサマーズ氏を殺害すると予告していた。要求の内容はこの動画の中では明らかにされていなかった。ある米軍高官は、AQAPがサマーズ氏殺害の期日を米国時間6日朝に前倒ししたことを示す「相当の兆候」があったため、「われわれは可能な限り早く動いた」と述べた。

 この米軍高官によると、特殊部隊が真夜中にイエメン南部のシャブワ(Shabwa)州の人質がとらわれていた場所から10キロ離れた場所にヘリコプターで運ばれ、そこから徒歩でAQAPの潜伏場所に向かったが、約100メートル手前で見つかってしまった。「これで奇襲が不可能になり、銃撃戦が始まった。(人質は)この時に撃たれたと考えている」(同高官)

 特殊部隊員1人が米強襲揚陸艦マキン・アイランド(USS Makin Island)に戻る途中で死亡し、もう1人が同艦上で手術を受けた。イエメン政府は、武装勢力の10人を殺害し、イエメン軍の4人が負傷したと発表した。

 サマーズ氏は2013年9月にイエメンの首都サヌア(Sanaa)で拉致されていた。コーキー氏は2013年5月、妻と一緒に拉致されたが、妻は今年1月に解放されていた。コーキー氏夫妻は4年間にわたり教師としてイエメンで働いていた。

 慈善団体「ギフト・オブ・ギバーズ(Gift of Givers)」によると、コーキー氏を7日にイエメンから出国させる準備がすでに進行していたという。同団体は「(妻の)ヨランダさんと家族の心理的、感情的な苦しみは、ピエールが明日解放されることを知っていたがゆえにいっそう深い痛みとなった。3日前、われわれは妻に『ピエールはクリスマスには家にいるよ』と言った。それがこういう形になるとは想像もしていなかった」と発表した。

 同団体のイムティアズ・スーリマン(Imtiaz Sooliman)会長は、サマーズ氏の家族からの圧力を受けて米国が行動を起こすことを5日の時点で予期していたといい、その作戦の中でコーキー氏が死亡する可能性を恐れていたことを明らかにしつつ「この件で誰かを非難することはできない。これは人質事件であり、そのような状況では誰もが自分の利害で動く」と述べた。

 米国務省当局者は、潜伏場所にサマーズ氏ともう1人の人質がいると考えていたが、サマーズ氏でない方の身元は把握していなかったと述べた。

 イエメン国防省によると、先月米軍とイエメン軍が南部ハドラマウト(Hadramawt)州で救出作戦を行う前にAQAPは、サマーズ氏と英国人1人、南アフリカ人1人を別の場所に移動させていた。英国人人質の行方は分かっていない。イエメンは米国の主要な同盟国で、自国領内でのAQAPに対する無人機攻撃を米軍に認めている。(c)AFP/Fawaz al-Haidari with Jamal al-Jabiri in Sanaa