■ロシア社会の「爆弾」か

 プーチン大統領に直接報告を行っているロシア連邦捜査委員会(Investigative Committee)は11月12日、数日間の沈黙を破って、既に複数の容疑者を逮捕していると発表した。主犯格の1人は武装して抵抗したため殺害。犯行は金目当ての強盗で、「GTAを模倣したとの仮説は立証されていない」との説明だった。

 この逮捕劇は、警察が11月初頭に中央アジア出身の出稼ぎ労働者の一団を一斉検挙した際に起きたとみられる。露メディアは警察筋のリーク情報として、「GTAギャング」のリーダーとされる容疑者がモスクワ郊外で、手投げ弾で警察を攻撃しようとして射殺されたと伝えた。

 ところが翌13日になって捜査委員会は、主犯格の1人がロシア検察庁幹部から家を借りていたという意外な発表を行った。この家からは大量の武器や弾薬が押収されたとみられている。

 政治評論家のアレクセイ・マカルキン(Alexei Makarkin)氏は、この事件を取り巻く謎は極めて高い機密性にあると指摘する。「この事件は爆弾になり得る。当局は民族衝突を避けるためなら何でもするだろう。極右民族主義者に移民を糾弾する格好の材料を与えかねないからだ」

 ロシアでは今年、社会の緊張が高まっている。ウクライナ問題で欧米から制裁を受け、失業率も上昇していることが背景にある。プーチン大統領は民族主義の扇動を繰り返し非難し、ロシアの多民族・多宗教国家としての歴史を強調している。

 捜査当局が拘束しているのは事件と関わりのない人物だ、あるいは当局は事件の全容を語っていない、と主張する人々は多い。モスクワ近郊では、拳銃などで武装した自警団が自分たちで犯行グループを取り押さえようと巡回警備を行っている。

 露政府に批判的な論調で知られる独立系紙ノーバヤ・ガゼータ(Novaya Gazeta)に「GTAギャング」の記事を執筆しているジャーナリストのセルゲイ・カネフ(Sergei Kanev)氏は、犯人グループの動機について二転三転した説明を行っている捜査当局の矛盾を指摘。「GTAギャングは、まだ捕まっていないと思う。市民は気をつけた方がいい」とAFPの取材に語った。(c)AFP/Laetitia PERON, Anna SMOLCHENKO