【10月14日 AFP】イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」は12日に発行されたプロパガンダ誌「ダビク(Dabiq)」最新号の中で、イラク北部で捕虜にしたクルド系少数派ヤジディー(Yazidi)教徒の女性や子どもたちを、戦利品として戦闘員たちに与えていることを明かし、奴隷化を復活させたとして自賛した。

 ヤジディー教徒の拘束や人身売買をISがはっきりと認めたのは初めて。大半がイラク北部の限定された範囲に居住しているヤジディー教徒たちは、周辺での4か月にわたるISの攻撃により避難を余儀なくされている。ヤジディー教徒の指導者たちと人権団体は8月、ヤジディー教徒が大虐殺に直面していると警鐘を鳴らし、このことが米政府をISに対する空爆に動かす一因となった。

 8月にはヤジディー教徒が主な拠点とするイラクのシンジャル山(Mount Sinjar)周辺で数千人が立ち往生している間に、他のヤジディー教徒が大量に殺害され、行方不明となった女性や子ども数百人の消息は分からないままとなっている。

■少女を1000ドルで人身売買

 ヤジディー教の信仰は、いくつかの宗教から引用された教えが混ざった独特なもので、中には「くじゃく天使(Peacock Angel)」と呼ばれる悪魔的存在の崇拝も含まれる。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights WatchHRW)の12日の報告によると、ヤジディー教徒の女性たちはISの戦闘員たちの間で性暴力の対象とされ、売り買いされているという。

 HRWがイラクのクルド人自治区に逃れて来たヤジディー教徒数十人に対し、9月と10月初旬に行ったインタビューによれば、ISには少なくとも366人が拘束されているとされるが、ISの拘束からどうにか逃げ出してきた女性たちによれば、拘束されている人数は少なくとも3倍には上るという。9月7日に脱出した15歳の少女はHRWに対し、自分を買ったパレスチナ人の戦闘員は「誇らしげに」、(少女を)買うのに1000ドル(約10万円)を支払ったといわれた、と語った。

 HRWによれば、奴隷状態に置かれているヤジディー教徒の少女たちが受けている性的被害の詳細については明らかになっていないが、被害者による直接の証言が少ないのは、ヤジディー教徒の文化では強姦の被害者が汚名を着せられることを考えれば説明がつくと強調している。(c)AFP/Jean Marc MOJON