【10月14日 AFP】米国のハイテク業界は、職場での男女のバランスや平等に関する批判にさらされている。そんな中で米マイクロソフト(Microsoft)のサトヤ・ナデラ(Satya Nadella)最高経営責任者(CEO)も、女性の昇給をめぐり失言をしてしまった。

 ナデラ氏は9日、女性技術者のためのイベントで、働く女性は昇給を積極的に求めるのではなく、働く中で制度によって適切な昇給が与えられること、カルマを信じるべきだと述べたが、参加者などから非難を浴び、発言をすぐに撤回。従業員向けの書簡で、「私は返答を完全に誤った」と謝罪し、ツイッター(Twitter)でも釈明に努めた。

 ハイテク産業が集積する米シリコンバレー(Silicon Valley)では、男女間の賃金格差や労働者と経営陣の双方における男女のバランスの欠如などについて批判が高まっている。

 ワシントン(Washington D.C.)のシンクタンク、インスティチュート・フォー・ウーマンズ・ポリシー・リサーチ「Institute for Women's Policy Research」のアリアン・ヘゲウィシュ(Ariane Hegewisch)氏は、「ハイテク業界は女性にとって今も、非伝統的な職業だ」と述べ、この業界でカルマが女性に好都合に働いているというケースはそう多くはないと指摘した。

 カリフォルニア(California)州のシンクタンク、ジョイント・ベンチャー・シリコン・バレー(Joint Venture Silicon Valley)による2014年の調査によると、シリコンバレーでは、大学院を修了、あるいは博士号を持つ男性社員の収入は、同等の学歴の女性より73%多いという。学士号では男女間で40%の開きがあるという。

 賃金格差に関する認識と関心を高めることを目指したキャンペーン「イコール・ペイ・プロジェクト(Equal Pay Project)」の試算では、米国人女性1人に一生で支払われる賃金は男性に比べて43万5000ドル(約4650万円)少なく、その差は全体では総額29兆ドル(3100兆円)に上るという。

 また、ハイテク大手で全従業員に占める女性の割合は、マイクロソフトが29%、グーグル(Google)が30%となっている。フェイスブック(Facebook)では31%で、技術職に至っては15%にとどまる。

 ゲウィシュ氏は、ハイテク業界は1980年代以降、女性にとって難しくなってきていると指摘。「専門家集団の文化がより強くなり、徹夜で働く文化も強まった。こうした要因が女性を締め出している可能性がある」と指摘した。(c)AFP/Rob Lever