■20日間の地獄から生還した元患者

 訓練施設の「危険区域」では重症者を演じる元患者が、汚れたマットレスの上でもだえ苦しんでいる。治療訓練プログラムに参加しているボランティア6人は、訓練コースに恐ろしい現実感をもたらしている。

 ジェイコブ氏が説明する。「この24歳の女性は嘔吐が続いていて、下痢も起こしている。症状は過去24時間で急激に悪化した。医療施設にはベッドが空いてないため、その間、我々は彼女を治療する方法を見つける必要がある」。医療スタッフは消毒剤がしたたる防護服の内側で汗だくになりながら、女性をなだめようとする。水を欲しがった女性は、渡された水を全て吐き出してしまう。

 エボラウイルスは体液を介して伝染するため、吐しゃ物は単に拭き取るわけにはいかない。医療スタッフはゆっくり入念に消毒剤をかける。「ここで何を患者に与えますか?」とジェイコブ氏は訓練生に尋ねる。医師の1人が「点滴です」と答える。その医師の声は顔を覆ったマスクでくぐもっている。他の同僚と同様、その医師の氏名や役職は防護服に赤いペンで書かれている。

「治療施設が満員だった場合の患者の管理」と題された訓練項目から、「感染が確認された場合」という項目へと移る。感染を知って混乱し壁に頭を打ち付け、そして看護師がベッドに寝かせたところでけいれんする患者への対処法を学ぶ。

 ボランティアとして参加しているコバさんは「ETUを改善しなくてはいけないと思って参加した」と語った。治療施設はいつも定員オーバーで、設備もスタッフも足りていない。満足な衛生水準にも達してなければ、病気に打ち勝つために必要な保護もない。施設によっては、死ぬための場所でしかない。

 自身も医療助手でもあるコバさんは、自分が話していることの意味を正確に分かっている。「私は8月にエボラに感染した。ETUに収容されたのが8月6日で、出たのが8月28日だった。リベリアを救うための訓練を支援したかった」とコバさんは語った。

 WHOではこの訓練プログラムの下、8~10週の間に400人の医療従事者を訓練することを目指している。しかし専門家らは、リベリアが今回のエボラ流行に打ち勝つには数千人の訓練修了生が必要だと推計している。(c)AFP/Marc BASTIAN