【9月8日 AFP】全米オープン(The US Open Tennis Championships 2014)男子シングルス決勝でアジアの期待を背負う錦織圭(Kei Nishikori)と対戦するのは、こちらも四大大会(グランドスラム)初の決勝進出を果たしたマリン・チリッチ(Marin Cilic、クロアチア)となる。

 これまで参戦してきたグランドスラム28大会で、チリッチは、自分がスポットライトを浴びる日は来るのかと考えていたという。

 準決勝でグランドスラム通算17勝を誇るロジャー・フェデラー(Roger Federer、スイス)をストレートで下したチリッチは、「若いときは、ツアーに参戦していても、まだまだ時間がたっぷりあるように感じてしまう」と話した。

「まだまだグランドスラムの機会はたくさんある。きっとうまくやれる、という風にね。でも、時間が経つにつれ不安に思い始めるんだ。それが果たして実現するのかとね」

 2010年の全豪オープン(Australian Open Tennis Tournament 2010)で4強入りを果たしたチリッチだが、その後は、2012年の全米オープンと今季のウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2014)で記録したベスト8進出にとどまっている。

 チリッチは、悔しい経験を経て今年の全米オープン決勝にたどり着いた。服用した市販薬に禁止されている興奮成分が含まれており、ドーピング違反で昨年大会(The US Open Tennis Championships 2013)に出場することができなかったのだ。

 アンディ・マレー(Andy Murray、英国)らがチリッチの不用心さを指摘した一方で、フェデラーは、この出来事のせいでチリッチへの見方が変わったことはないと話した。

 チリッチにより全米オープン6勝目の夢が絶たれたフェデラーだが、ドーピング違反について「彼がわざとやったわけではないと信じている」と話し、「それが愚かな行動かって?そうかもしれないが、どちらにしろ僕は気にしないよ」と擁護した。

 ドーピング検査で禁止薬物に陽性反応を示した結果、4か月の出場停止処分を受けたチリッチだが、自身の試合を見直してコンディションの調整に努め、長期間故障に苦しめられていた膝を徹底的に休ませるための期間なのだと考えるようにしたという。

 今季、チリッチは地元開催だったPBZザグレブ・インドア(PBZ Zagreb Indoors)で4度目の優勝を飾ると、デルレイビーチ国際テニス選手権(Delray Beach International Tennis Championships)でツアー11勝目を挙げた。

 全米オープンの前哨戦の一つであるロジャーズ・カップ2014(Rogers Cup 2014)でもチリッチと対戦していたフェデラーは、今大会でチリッチの変化に気付いたという。

「以前の彼のプレーには波があった。とりわけ、ベースラインからはね。彼は、リターンゲームの戦い方をある程度見直したようだ。以前なら、調子が良いのか悪いのか明らかだったが、今は全試合でコンスタントにサーブを決めている」

 安定したプレーを習得したチリッチは、自信を持って試合に臨めるようになったという。

「今は厳しい試合を迎えても、うまくやればチャンスがつかめると考えるんだ。以前の僕だったら、実力以上のことをしようとしていた。そうすると、試合は崩壊してしまうんだ」

(c)AFP/Rebecca BRYAN