【6月27日 AFP】冬の間の氷点下の気温、絶滅危惧種の生息地、乏しいインフラ──ロシア北極圏は、こうした障害などにもかかわらず、石油各社にとって、大規模な資源の埋蔵が期待される約束の地となっている。

 19日までロシアの首都モスクワ(Moscow)で開かれていた世界石油会議(World Petroleum Congress)で、米石油大手エクソンモービル(ExxonMobil)のレックス・ティラーソン(Rex Tillerson)最高経営責任者(CEO)は、「北極圏は、手付かずの石油や天然ガス資源が眠る世界最大の地域の1つ」と語った。ノルウェーのエネルギー大手スタトイル(Statoil)のティム・ドッドソン(Tim Dodson)上級副社長も、「大規模な資源の発見が期待される数少ない地域の1つだ」と述べた。

 米地質調査所(US Geological SurveyUSGS)が2008年に発表したレポートによると、世界でまだ発見されていない炭化水素資源の20%以上が北極圏に存在する。その大部分はロシア・シベリア(Siberia)地方西部から極東ロシアまでの地域に眠っているとされる。

 エクソンのティラーソン氏は、米国のアラスカ(Alaska)やノルウェー北部、ロシアのサハリン(Sakhalin)では過去数十年、(石油)探査や開発が行われてきており、北極圏は石油業界にとって「未知の領域ではない」と話した。

 一方、スタトイルのドッドソン氏は開発における課題を指摘。「気候は最も明確な課題だ。氷や雪、寒さ、暗闇が、厳しさと美しさを併せ持つ環境を作り出している」と述べ、「北極圏の可能性をすべて引き出し、採算がとれる、国際競争力のある事業にするため、新たな技術と革新的な事業モデルが必要だ」と話した。

 ロシアの石油会社バシネフチ(Bashneft)の生産部門担当副社長、オレグ・ミハイロフ(Oleg Mikhaylov)氏は、ロシア北極圏での探査には「民間企業の投資のほか、ロシア政府の大規模な援助が必要だ」と述べ、主要な構造物の建設に加え、輸送インフラの拡張や港湾施設の建設などが必要だと指摘した。

 地球温暖化の影響で北極圏の氷床が解け、これまで接近できなかった資源への道が開かれた。だが、こうした事業にはリスクが伴う。ミハイロフ氏によると、北極圏沖合で原油流出が起きた場合、2010年にメキシコ湾(Gulf of Mexico)で起きた英石油大手BPの原油流出事故をも上回る惨事となり、対処がより困難になる可能性があるという。

 国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)などの非政府組織(NGO)は、北極圏での石油・ガス探査は、ホッキョクグマやクジラなど絶滅危惧種が生息する壊れやすい生態系に悪影響を及ぶすだけでなく、気候変動を加速させる恐れがあると主張する。

 ただ今のところ、掘削作業は中断されていない。スタトイルは、北極圏の過酷な気候下でも使用できる掘削船の設計を行っている。フランスの石油大手トタル(Total)はロシア国営の天然ガス大手ガスプロム(Gazprom)と提携し、バレンツ海(Barents Sea)のシュトックマン(Shtokman)ガス田事業で、費用効率の高い方法を求めて長年にわたって連携している。(c)AFP/Frederic Pouchot