【6月27日 AFP】スーダンで背教行為を理由に受けた死刑判決が取り消され、米国へ出国しようとしたところを拘束された女性が26日釈放され、米国大使館に保護された。

 この女性は、イスラム教徒の父親とエチオピア正教会のキリスト教徒の母親を持つキリスト教徒のメリアム・ヤヒア・イブラヒム・イシャグ(Meriam Yahia Ibrahim Ishag)さん(26)。同国で1983年に施行された、改宗者は死刑に処すと定めたイスラム法(シャリア)に基づき一審で有罪が言い渡されたが、上訴審で判決が取り消され、23日に釈放された。イシャグさんは女子刑務所内で女児を出産した。イシャグさんの処遇については、宗教の自由の観点から、欧米政府や人権団体が非難していた。

 イシャグさんの弁護人を務めるモハナド・ムスタファ(Mohanad Mustafa)氏は26日「彼女(イシャグさん)は米国大使館にいる。彼女と夫は自分たちにとってそこが安全な場所だと考えている」と語った。イシャグさんは殺害の脅迫も受けていたという。イシャグさんの身柄拘束は、死刑に処される可能性などから、米国の人権運動家らの間で大きな懸念を呼んでいた。

 米国務省のマリー・ハーフ(Marie Harf)副報道官も、イシャグさんとその家族は「安全な場所にいる」と認め、スーダン政府からも「一家の安全」を保証されていると述べた。プライバシーへの配慮から、イシャグさんらが現在いる場所については明言しなかった。

 イシャグさんは24日に米国へ向かって出国しようとした際、提示した南スーダンの渡航書類について文書偽造と虚偽申告の疑いで拘束され、26日朝の時点で警察に拘束されていた。その間、イシャグさんの弁護団は釈放後の身元引受人を探していた。引受人となった人物はスーダン人だという以外、詳細は明かされていない。

 イシャグさんの夫で米国籍を取得しているダニエル・ワニ(Daniel Wani)さんによると、拘束時、米大使館の職員らが夫妻と2人の子どもにハルツーム(Khartoum)の空港まで付き添っていた。

 南スーダン大使館は、イシャグさんの夫と2人の子どもは南スーダン人なので、イシャグさんも南スーダン発行の書類で渡航する資格があると述べている。一方、スーダン政府はイシャグさんがスーダン発行の旅券を使用すべきだったと主張し25日、米国と南スーダンの代理公使を呼び出していた。(c)AFP