【6月23日 AFP】マニキュアにマッサージ、自動車整備についてのレッスン──どれも自動車修理工場にはなさそうなサービスだ。ところが、5月に仏パリ(Paris)近郊にオープンした工場では、従来の「男性的な」自動車修理工場の形態をがらっと変え、女性客に合わせたサービスを提供している。

 パリ郊外サン・トゥアン・ロモヌ(Saint-Ouen-l'Aumone)にある工場「オンリー・ガールズ(Only Girls)」は、自動車修理工場では女性だからとみくびられ、長く待たされることが多いと不満を感じている女性をターゲットにしている。

 42歳の女性客、サンドリン・オーテンヌさんは「女性だというだけで、おでこに『私はカモです』と書いたタトゥーを入れているようなものよ」と話す。「以前、3か所の修理工場で見積もりを出してもらったけれど、どれも金額が違った。それで、叔父に見積もりを取りに行ってもらったの。そしたら、修理代が下がったのよ」

「オンリー・ガールズ」でオーテンヌさんは女性整備士から、タイミングベルトやブレーキパッドなどについて、15分間の詳しい説明を受けた。「整備士が男性だったら、何の説明もなかったでしょうね」という。

 オープンから1か月で「オンリー・ガールズ」を訪れた客は40人、うち3分の2が女性だった。マニキュアのサービスを受けたジェニファー・コロンさん(25)は「ここでは、すごく歓迎されている気分になるの!」と嬉しそうに話した。

 子どもの遊び場もある。待合室のインテリアは藤色の壁紙に堅木張りの床、チラチラと揺らめくキャンドル、ビロードのソファと、修理工場というよりもまるでスパにいるようだ。

 広告グループ、CAコム(CA Com)のロドルフ・ボナス(Rodolphe Bonnasse)氏によると、フランスはいわゆる「ジェンダーを意識したマーケティング」で英国や日本などより遅れているが、最近では女性客を特に対象としたスポーツクラブや保険会社、クレジットカードなどがたくさんあるという。

 ただし、ブロガーのソフィー・グリアン(Sophie Gourian)さんのようなフェミニストにとって、女性を意識したこうした風潮は女性解放運動の影響ではなく、浅はかなマーケティング術と映る。「こうしたサービスの後ろにある言説全体が、固定観念に基づいた、実に時代遅れのもので」女性は「少々ばかだ」という考えを示すものだという。

 しかし「オンリー・ガールズ」で働く2人の女性の整備士にとっては、キャリア上の思いがけない幸運だった。その1人、オーロラ・ダビローさんは整備士の資格を取ってから3年間、職を見つけるのに苦労した。「修理工場のオーナーたちは私を信用できないようで、よく『ここには働く場所はないよ』って言われたわ」

 客についてもスタッフについてもジェンダー意識の高い「オンリー・ガールズ」だが、少なくとも1点だけ、古風な面を残している――マネジャーは男性だ。(c)AFP/Clement GASSY