【6月11日 AFP】1986年のW杯メキシコ大会は、良くも悪くもアルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナ(Diego Maradona)の大会だった。

 それは、準々決勝のイングランド戦での出来事だった。

 良い側面は、マラドーナが卓越した個人技による得点で2-0とし、最終的にはアルゼンチンが2-1で勝利を収めた。

 しかしながら、マラドーナが挙げた先制点が歴史に刻まれたのは、自分よりはるかに長身であるイングランドのGKピーター・シルトン(Peter Shilton)との空中戦をどうにかして制し、ボールをゴールネットに押し込んだ際の反則的な理由にほかならない。

 ペナルティーエリアにいたイングランドの選手は、全員すかさずマラドーナが手を使ってゴールを決めたと主張したが、チュニジア人審判のアリ・ビン・ナセル(Ali Bin Nasser)氏とラインズマンは違反行為を確認しておらず、得点を認めてしまった。

 試合後に記者会見に臨んだマラドーナは、最初の得点について、「あれは、マラドーナの頭と神の手によるものだった」という歴史的名言を残している。

 イングランド国民が激怒する一方で、アルゼンチン国民の多くはフォークランド諸島(Falkland Islands、アルゼンチン名:マルビナス諸島、Islas Malvinas)での紛争で敗戦したリベンジとして受け入れ、純粋に喜びに沸いた。

 マラドーナは後年、あのゴールは認められるべきでなかったと自身でも悩んだことを明らかにした。

 2005年に米CNNテレビに出演したマラドーナは、「あの時、チームメートが私を抱きしめてくれるのを待っていたが誰も来なかった。私は彼らに『ハグしてくれ。審判は得点を認めてくれないだろうから』と言ったんだ」と語った。(c)AFP