■温暖化で紛争の目に見えない要因に

 国家安全上の脅威をめぐっては、貧困、人口移動、飢饉などが騒乱や紛争の目に見えない要因になり、また減少しつつある資源をめぐる争いが激化すると報告書は警告する。

 報告書草案の要約では以下のようにつづられた:

「21世紀全体にわたる気候変動は、国家に新たな難題をもたらし、国の安全保障政策の構築に与える影響がますます大きくなる」

「小島諸国などの海面上昇の影響を非常に受けやすい国々は、領土の保全に対する大きな問題に直面する」

「海氷の変化、共有の水資源、漁業資源の移動などの気候変動の国境を越えた影響は、国家間の対立関係を悪化させる可能性がある。ただし強固な機関を介在させることで、紛争リスクを軽減させ対立関係の多くは処理できる」

 報告書はまた、炭酸ガス排出量を「今後数十年にわたって」削減できれば、気候変動が招く最悪の結果の多くを世紀末までに回避できると述べている。

 IPCCは炭酸ガス排出に対処するための戦略に関する報告書の第3部を、4月13日にベルリン(Berlin)で発表する予定だ。

 IPCCは25年の歴史の中で、「評価報告書」をこれまでに4回発表してきた。

 交通、発電所その他の化石燃料の燃焼で放出される二酸化炭素(CO2)や森林伐採や農業によるメタンガスの数十億トンに及ぶ排出量に関して、評価報告書が鳴らす警鐘は発表を重ねるごとにますます大きくなっている。

 今回横浜で発表される要約は、地域的影響の予測、紛争リスクの強調および海面上昇について、これまで以上に詳細に深く踏み込んだものになっている。(c)AFP/Richard INGHAM