【2月26日 AFP】「地球工学」で地球温暖化を防ぐというSF的な提案は、簡単な解決法とはとうてい言えず、実際には事態を悪化させる恐れもあるとする研究論文が25日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された。

 かつて「非科学的」とやゆされていた地球工学による温暖化対策は、炭素排出量の急増により地球の気温が2100年までに4度上昇するとも危惧される中で、注目を集めるようになった。

 太陽光線を反射する鏡を宇宙空間に建設したり、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を吸収するプランクトンを育てたりするアイデアが挙げられているが、大半はまだ実験的または未試験の段階にある。こういった方法の目標は、人類が引き起こす気候変動に拍車をかけている安価で「汚い」エネルギー源から、世界経済が脱却するための時間稼ぎをすることだ。

 だが今回発表されたこれまでで最も包括的な調査によると、現在の排出傾向が続くと、こういった技術では、気温上昇幅を国連(UN)目標値の2度以内に抑えられる見込みはほとんどなく、むしろ事態をますます悪化させかねないという。

 論文の共同執筆者、ドイツ・ヘルムホルツ海洋研究センター(Helmholtz Centre for Ocean Research)のデービッド・ケラー(David Keller)氏は「気候工学だけでは、気候変動を抑制するための有効な解決策にはならない」と指摘している。

 研究チームは、炭素排出量が高い状況が今後も続くという仮定のもとで、地球工学を用いた5つの温暖化対策案の影響を見積もるためのコンピューターモデルを作成した。対象となった対策案は、次の通り。

・大規模な植林を行い、大気中のCO2を吸収し蓄えさせる。

・鉄分で海を肥沃化し、植物プランクトンの成長を促す。プランクトンが増えれば、光合成により海面からCO2を吸収する量も増加する。

・長いパイプを使って、深海の冷たく栄養分に富んだ海水を海面までくみ上げ、プランクトンの発育を促す。

・石灰石を使って海をアルカリ化し、化学反応を発生させて大気中のCO2の吸収量を増やす。

・光反射率が高い微粒子の大気中への放出や、宇宙空間への鏡の設置により太陽光線を反射させる「太陽放射管理(SRM)」技術を使用する。

 だがシミュレーションの結果、これらの技術を組み合わせて可能な限り広範囲に適用したとしても、CO2排出が現状のまま続けば、平均表面温度が目標値の2度を超えて上昇するのを回避できないとみられることが分かったという。