■中国の変化と若い世代に期待

 グドール博士が約20年前に設立した子どもや若者のための環境教育プログラム「ルーツ・アンド・シューツ(Roots and Shoots、根っこと新芽の意)」 も中国との関わりを持つ。グドール博士は「大勢の中国の子どもたちがプログラムに参加しているが、ここで参加している子どもたちと違いはない。皆、自然と動物を愛し、力になりたいという気持ちを持っていて、中国人だからという違いはない」と述べる。

 世界を変革しようという若者たちの熱意は、現在も1時間以上にわたって聴衆を釘付けにし、無尽蔵のエネルギーの持ち主に見えるグドール博士にとって大きな希望の種だ。「こうした若い人たちには、次世代の親となり、教師となり、法律家、実業家、政治家となる人たちがいる。みんな理解はしているのだが、何をしたら良いか分からないことが、最大の問題だ。もしも千人、百万人、ついには数百万人の人たち全員が正しい選択をすれば、全員が自分たちの行動の結果を考えれば、私たちはとても大きな変化を目にするだろう」

 もう一つの希望の光は「驚くべき自然の回復力」だとしてグドール博士は、深刻な土壌侵食から回復した黄河(Yellow River)流域の黄土高原(Loess Plateau)を例に挙げた。世界銀行(World Bank)によると、中国政府と国際援助機関などの出資による4億ドル(約400億円)のプロジェクトで、黄河流域に新たな農法が導入され、侵食が大幅に減少した上、250万人が貧困から脱した。

「多額の資金がかかったが、この地域を今見れば、青々とした農地が広がっている。子どもたちも都会から戻り、野生動物さえ地域全体に戻ってきている。わずかだが、まだ状況を変える時間はある」とグドール博士は語った。(c)AFP/Christophe BEAUDUFE