【9月25日 AFP】「お前たちは悪者だ」──ケニアの首都ナイロビ(Nairobi)で起きたイスラム過激派による高級ショッピングモール襲撃事件で、実行犯の1人に向かって4歳の男児が言い放った。同国の大統領が事件の終結を宣言する中、世界を震撼(しんかん)させた事件で何が起きていたのか、少しずつ明らかになってきた。

 事件が起きた21日は土曜日で、多くの買い物客がモールを訪れていた。屋上では同日、ラジオ局の人気パーソナリティー数人が司会を務める、幼児を対象にした料理大会も開催され、数十人の子供たちが参加していた。


■楽しい子供料理コンテストが地獄絵図に

 同日正午ごろ、突然銃声が鳴り響き、買い物客のおしゃべりや子供たちの声、そして施設内部に流れていたソフトなBGMをかき消した。防犯カメラは施設の正面と反対側から侵入する約10人の武装グループの姿を捉えていた。武装グループは、手りゅう弾やライフル、拳銃に大量の弾薬を携えていた。

 目撃者によると、武装グループは「動いているもの」全てに見境なく発砲し、ショッピングモールにいた人たちは走っては転び、互いに踏みつけながら銃撃から必死で逃れようとしたという。襲撃犯らは現場にいた人にイスラム教の信仰告白を言うように命じ、言えなかった人を銃で撃った。

 料理大会が開催されていた屋上には手投げ弾2発が投げ込まれ、会場は一瞬にして地獄絵図と化した。

■妊娠6か月のラジオパーソナリティーも犠牲に

 大会を主催したラジオ局East FMのアリーム・マンジ(Aleem Manji)氏は、「小さなエプロンをつけた子供たちが大騒ぎで調理していた。(そこで)銃声が複数回聞こえた」とCNNに述べた。「伏せろ、床に伏せろと言っていたら、近くに手投げ弾が投げ込まれた」と話すマンジ氏の目は眼帯で覆われていた。ガラスの破片などで負傷したのだという。

 テレビやラジオで活躍していたルヒラ・アダティア・スード(Ruhila Adatia-Sood)さんも大会で司会を務めていた1人だったが、この事件で死亡した。ルヒラさんは妊娠6か月だった。

 マンジ氏によると、実行犯の1人は「自分たちはソマリアから来た。普段は女や子供を殺すことはない。ただお前たち(ケニア政府)は私たちの女や子供たちを殺した」と語っていたという。

■襲撃犯、子供たちに謝る

 襲撃事件で子供の死者も報告されているが、買い物で家族と共にモールを訪れていた英国籍のエリオット・プライアー(Elliot Prior)君(4)は、幸運にも生きたまま現場を後にすることができた。

 英大衆紙サン(The Sun)が、エリオット君のおじ、アレックス・クーツ(Alex Coutts)さんの話として伝えたところによると、「生きている子供がいればショッピングモールから出て良い」と襲撃犯らが言ったため、エリオット君の母親で映画プロデューサーのアンバー(Amber)さんは立ち上がった。

 アンバーさんはエリオット君と、さらに2人の子供をショッピングカートに乗せてショッピングモールの外に出たという。そのうち1人は、母親を殺され、自身も負傷した12歳の子供だった。「そうしたらエリオットが実行犯たちを悪い奴らとののしったんだ。勇気ある行動だった」(クーツさん)

 エリオット君の言葉を聞いた実行犯は子供たちにチョコレートバーを渡し、「許してくれ。俺たちは怪物ではないんだ」と言ったという。(c)AFP/Aymeric VINCENOT