【8月23日 AFP】陸上女子、棒高跳びのエレーナ・イシンバエワ(Yelena Isinbayeva、ロシア)が、22日に刊行された週刊誌のインタビューで、「荒れ果てた」母国ロシアを離れ、モナコへ移住することを考えていると明かした。

 第14回世界陸上モスクワ大会(14th IAAF World Championships in Athletics Moscow)の女子棒高跳びを制したイシンバエワは、反同性愛法への支持を口にしたことで議論の的となっていた。

 五輪で金メダルを2つ獲得している31歳のイシンバエワは、生まれ故郷のボルゴグラード(Volgograd)で大部数を発行する週刊誌「論拠と事実(Argumenty i Fakty)」のインタビューで、母国よりも生活とトレーニングの環境に優れるモナコに移住したいとの希望を明かした。

「海外で暮らしたいと思っています。ボルゴグラードに対して果たすべき役割はたくさんありますが、私はモナコで暮らしたい」

 同性愛者の権利について物議を醸すコメントを発して以降、初めての本格的なインタビューに応じたイシンバエワは、故郷に対して幻滅しており、今後はコーチを訪れるくらいしか戻る機会はないだろうと語った。

「まったくお金のないこのボルゴグラードで、私に何ができるのでしょうか。この街は時代遅れの、恐ろしい場所になりました。荒れ果ててしまったんです。道もひどい。外国の車を買っても、ほとんど役立たずも同然です」

 イシンバエワはさらに、教師や医師、スポーツトレーナーの労働状況にも不満を語り、「私たちの街は、実際に人が暮らせる状況にはありません。なのに誰も私たちの言葉に耳を貸さず、ただ手を振ってはねのけるだけです」

 イシンバエワは先日、ロシアが成立させた「同性愛のプロパガンダ(宣伝)行為」を禁止する法律を支持し、西欧の活動家や批評家から非難を浴びた。正確な意図こそはっきりしないものの、この法律は同性愛者を締め付ける手段になると見られている。

 イシンバエワはモスクワでの世界陸上で「人はみな、自分をごく普通の一般的な人間だと考えている。男は女と、女は男と暮らすものだと」とコメントしたが、その後、誤解されたとして釈明した。

 ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が、6月に前述の法律に署名すると、各所ですぐさま2014年のソチ冬季五輪ボイコットを求める動きが起こった。

 イシンバエワ自身は、子どもを産むために18か月の休養に入り、2016年リオデジャネイロ夏季五輪での復帰を目指すと表明している。

 プーチン大統領支持を公言するイシンバエワは、過去にモナコに居住していたこともあったが、ボルゴグラードへ戻り、長らくコーチを務めたエフゲニー・トロフィモフ(Evgeniy Trofimov)氏の下で競技に取り組んでいた。(c)AFP