【3月29日 AFP】欧州では今月31日にサマータイム(夏時間)への切り替えが行われ、人々の睡眠時間が1時間削られることになるが、米国では大半の人が夏時間への移行を3週間前に済ませている。秋になると、欧州の夏時間は米国より1週間早く終わる。

 大西洋の向こうとこちらで、これほどの違いがあるのはなぜか。その答えは、米国のゴルフ業界とバーベキュー業界に目を向ければ分かる。

 かつて米国では、標準時と夏時間の切り替えを毎年4月末と10月末に行っていたが、1986年にロビー団体が「夏時間が長くなれば売り上げが伸びる」として、議員らに働きかけてからその期間は変わった──。米作家のマイケル・ダウニング(Michael Downing)氏はこう説明する。

 米ボストン(Boston)のタフツ大学(Tufts University)でクリエイティブ・ライティングを教えるダウニング氏は、「Spring Forward, The Annual Madness of Daylight Saving Time(春前倒し:毎年繰り返される夏時間をめぐる狂気)」の著者。同氏によると、バーベキュー業界はこの時、「夏時間が1か月延びれば、バーベキュー器具と木炭の売り上げが2億ドル伸びる」と主張した。

 また「ゴルフ業界では、夏時間が1か月長くなると、コース使用料とゴルフ用品販売で合わせて4億ドルの増益が見込まれるとされた」といい、「これは25年前の試算だ」とも加えた。

 その後しばらくの間、米国の夏時間開始時期は欧州と同じ4月上旬となっていた。しかし2005年、期間は再び変更された。夏時間の開始が3月の第2日曜、標準時に戻るのは11月の第1日曜となり、欧州と比べて開始時期が3週間早く、終了時期が1週間遅くなった。

 この2度目の変更に反対する業界が少なくとも1つあった。航空業界だ。ダウニング氏によると、航空業界は「長年固定されていた国際線の発着時刻の調整を強いられ、その費用は2億~4億ドルに上った」という。

 米政府は、他国もこの変更に追従することを期待し、2年間の猶予期間を設けたが、この誘いに乗る国はいなかった。

 また、米国内でこの夏時間のジレンマをさらに深めているのが、サマータイム導入は各州の判断にゆだねられているという点だ。現在、常夏のハワイ(Hawaii)と酷暑で知られるアリゾナ(Arizona)の2州がサマータイムを導入していない。(c)AFP/Marc-Antoine Baudoux