【1月27日 AFP】エジプト北東部ポートサイド(Port Said)で26日、昨年2月に74人が死亡したサッカー場での暴動事件の被告21人に死刑判決が下されたことを受け、この判決を不服とする被告の親族らが刑務所を襲撃するなどして警官や治安部隊と激しく衝突した。また、周辺住民も警察署を襲撃したり、タイヤに放火するなどして暴徒化した。

 エジプト保健省によると、これまでに少なくとも30人が死亡、312人が負傷した。内務省によると、死者には警官2人も含まれる。さらに、医療関係者がAFPに語ったところによれば、犠牲者の死因はすべて、銃弾を受けたことだった。警官に向けて自動小銃を発砲した人物がいたとの目撃情報もあり、警察はこの後催涙ガスを使用した。

 一方、治安部隊によると、暴動は周辺地域にも拡大しており、スエズ(Suez)でも警察署が襲撃され、身柄を拘束されていた25人が逃走。武器が奪われるなど混乱が広がっている。
 
■サッカー場暴動事件

「満足な判決だ」――暴動を主導したとして起訴された地元のサッカークラブ「アル・マスリ(Al-Masry)」のサポーター21人に死刑判決が下された直後、裁判所に詰めかけていた被害者の親族らは、歓喜に沸いた。号泣する女性や抱き合う親族らが、「アッラー・アクバル(アラーは偉大なり)」と叫ぶ声が周辺に響き、死んだ友人の写真を胸に貼った男性も、「正当な裁きが下された」と話した。息子がサッカー場での乱闘事件で死亡したという男性も、判決を歓迎するとの声を上げた。

 ポートサイドにあるサッカー場で昨年2月に発生したこの事件は、アル・マスリとカイロ(Cairo)の人気チーム「アル・アハリ(Al-Ahly)」の試合後、両チームのサポーター間での大規模な乱闘に発展したもの。

 ただし、エジプト国民の多くは、このサッカー場での暴動事件を画策したのは警察、あるいはホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)前大統領の支持派だとみており、興奮したサポーター間の乱闘にとどまらない可能性が指摘されている。

■今後の判決でさらなる混乱の可能性も

 21人の判決に続き、3月9日には警官を含む他52人の被告に判決が言い渡される。エジプトでは慣例法に従い、死刑判決を下す際には大ムフティーに諮ることになっており、今回の判決についても近く、同国の最高イスラム法官である大ムフティー(Grand Mufti)が最終的な判断を下すことになっている。ただ、司法関係者によれば、被告が判決を不服として、控訴することは可能だという。(c)AFP/Haitham El-Tabei