【1月7日 AFP】存命中の冒険家の中では世界で最も偉大とたたえられる英国の冒険家ラノフ・ファインズ(Ranulph Fiennes)氏(68)が7日、史上初となる冬季の南極大陸横断挑戦に出発した。たとえ遭難しても救助は到底望めず、輝かしい経歴を持つ同氏にとっても未知への旅になるという。

 ファインズ氏は世界最高峰エベレスト(Mount Everest)を史上最高齢で登頂し、南極と北極それぞれの横断も達成した人物だ。6人の探検隊は7日、南アフリカのケープタウン(Cape Town)を船で出発し、今月末までに南極大陸に到着。準備をととのえた後、南半球が冬を迎える3月中旬から南極大陸を4000キロメートルにわたって横断する計画だ。

 過去に冬季の南極で記録された最長踏破距離は、20世紀初頭に樹立されたわずか60マイル(約97キロ)ほどに過ぎない。出発を目前に控えた6日、ファインズ氏はAFPの取材に次のように語った。

「40年間、冒険を続けてきた。たくさんの世界記録を破り、南極でも大記録を2つ達成している。1979年と92年のことだが、どちらも夏だった」

「だから冬の旅に関しては専門家というわけではない。冬に南極を踏破した記録は、たった60マイルの旅だけだ。つまり、われわれが向かうのは未知の領域というわけだ」

 南極は、氷点下90度近い世界最低気温が観測された地。ファインズ隊が横断を予定している6か月間には極夜があり、太陽はほとんど昇らない。平均気温は氷点下70度前後となる見込みだ。

 いったん出発したが最後、救援を当てにはできないのも、これまでの冒険と異なる。医師1人が加わった探検隊は、1年分の必需品を自ら運ばなければならない。「史上最重」でもある探検隊の旅は、クレバスを察知できる地中探知レーダーを装備した2人がスキーで先導し、その後ろをトラクター2台が他のメンバーや物資を乗せた改造コンテナを牽引して進むことになる。

 共同リーダーを務めるアントン・バウリング(Anton Bowring)氏は、今回の冒険を「極地探検で残された大挑戦の1つ」と語る。「評論家たち、南極について知っている賢い人たちは、この冒険をちょっとクレイジーだと思っているだろうね。まあ、見てのお楽しみだよ。このために5年間準備してきた。起き得る問題は全て把握したと判断したところだ」

 6人の上陸部隊のほか、氷対策を強化した南アフリカの退役極地調査船「SA Agulhas」にはバウリング氏らクルーや訓練生たちも同行する。

 一行は南アフリカの南にあるクラウン・ベイ(Crown Bay)から、1日22マイル(約35キロ)のペースで海抜1万フィート(約3000メートル)の高地を抜け、ニュージーランドの南にあるマクマード湾(McMurdo Sound)を目指す。(c)AFP/Justine Gerardy