【11月19日 MODE PRESS】寒さもますます身に染みるようになり、街のあちこちでイルミネーションが輝きはじめました。レストランも繁忙期に入り、まさにこれからが書き入れ時です。ワイン会やらクリスマスパーティーやら忘年会やら……イベントが立て続けに催されるこの季節、カジュアルな飲み会だけでなく、ちょっとかしこまったフレンチ・ディナーをいただく機会も増えてくるのではないでしょうか?

■“ツイード”と“レザー”

 せっかくフレンチに出かけるなら、旬を感じるファッションも楽しみたいもの。そこで今回取り上げたいのが、秋冬の定番アイテムであり、時代を超えて愛されている「ツイード」と「レザー」です。これらの素材をコーディネートに上手く取り入れることで、簡単、いや効果的に季節感を演出することが可能となり、オシャレ度もぐっとアップします。

 では、この2種の素材がどんなイメージをもたらすのかについて、バックグラウンドとともにちょっと分析してみましょう。

 まずはツイードから。この素材は、イギリス、スコットランド地方特産の毛織物の一種。ボーダー地方のツイード川流域で作られていたことからこの名がついたようです。特徴は、羊毛を様々な色に染めてから織り合わせることで、細やかな模様を作るところ。近年では毛糸のような糸で織ったヘリンボーンやチェック系の生地全般を指すようになりましたが、もともとはスコットランド産の羊毛を手織りしたもので、英国のメンズ服素材に用いられていました。そんなツイードをレディースファッションに取り入れ、女性のツイードスーツを提案したのが、フランスのデザイナー、ガブリエル・シャネルです。凛とした品性を感じさせてくれるシャネルツイードは常に女性のあこがれ。今も広く人々に愛されているこの素材は、繊細かつ上品で「都会的」な雰囲気をもたらします。

 次にレザーについて。その歴史は非常に長く、約50万年前から防寒や身体の保護のために用いられたと言われています。私たちの祖先は狩りをして食糧である肉を取り除き、残った皮を衣服として利用していたのです。そうした先人の知恵は優秀な革職人によって継承され、進化してゆきます。そこから、イタリアの「フェリージ」、フランスの「エルメス」、アメリカの「コーチ」など高級革製品ブランドが誕生し、レザーは洗練されたイメージへと発展しましたが、もとを辿ると食肉を得るための副産物でもあったのです。今やレザーの種類は多岐に渡りスタイルも様々ですが、やはりどこか「野性的」なイメージを持ちあわせ、アクティブで快活な印象を与えてくれます。

■どちらを選ぶかで今日のレストランも

 さて、この二つの素材についてお話したところで、ひとつ質問です。ツイード・ジャケットとレザー・ジャケット、今宵はどちらをまとってフレンチ・ディナーへ出かけたいですか?実は、その気分によって、いま行きたいレストランや食べたい料理のスタイルが見えてくるのです。

 まずは、ツイードを選んだ方にオススメのフレンチレストランをご紹介しましょう。ファブリックやガーデンに至るまでツイードのイメージを盛り込んでいる「ベージュ東京」はもちろん、ツイードの上品かつ都会的なイメージと調和するのは、色鮮やかな複数素材が織りなす総合芸術を楽しめるお店。ミシェル・ブラス仕込みの趣向をこらした野菜使いで知られる「レフェルヴェソンス」や、色とりどりの食材が凝縮されたアーティスティックなテリーヌを楽しめる「レザンファン ギャテ」などもイメージにぴったりです。

 一方、レザーの気分にピッタリなフレンチは、食材そのものの個性を前面にだした、豪快な料理がいただけるお店。特にこの時期だったら野趣あふれるジビエがいいでしょう。六本木のジビエ料理専門店「ラッシャッス」や、素材の魅力をエネルギッシュにひきだした肉料理に定評がある「マルティグラ」がオススメです。

 星の数ほどあるレストラン。大切なディナー会場を決めるのもなかなか大変な作業です。ならばこの冬は、ファッションのテイストやチャレンジしたい洋服のスタイルから、行きたいお店を絞ってみてはいかがでしょうか。【瀬川あずさ】

プロフィール:
聖心女子大学卒業後、施工会社の秘書を務め、飲食店の企画、設計、施工業務に携わりながら、レストラン巡りに没頭する。その後趣味が高じて、フードアナリ ストならびにワインエキスパート資格を取得。現在は、記者・ライター業、ワインスクール講師、飲食店メニュー開発などを務め、食を通じた豊かなライフスタ イルを提案するべく活動中。
(c)MODE PRESS

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