■「なぜ正恩氏が独裁者になったのか分からない」

 幼少時代を回想した際には、素直に「寂しかった」と語るハンソルさん。大半の時間を母方の家族と過ごし、前年12月に死亡した祖父の金正日氏には会ったことがないと述べた。「どういう人なのかただ知りたくて、いつも会いたいと思っていました。亡くなる(日)までずっと祖父のことを待っていました。いつかきっと会ってくれるんじゃないかと思って。僕が存在していることすら知っていたのかどうか、まったく分かりませんでした」

 ハンソルさんの父親の正男氏は、2001年に日本のディズニーランドを訪れるために偽造旅券で入国を図り、強制退去処分を受けたとされる。それ以降、金正日総書記から後継候補とはみなされなくなった正男氏は、マカオを中心に実質的には亡命状態の中、家族と共に暮らしてきた。

 体制の後継者が長男の正男氏ではなく、三男の正恩氏となったことについて質問されたハンソルさんは、「私の父は政治にあまり関心がありませんでした」と答え、さらに「彼(正恩氏)がなぜ独裁者になったのか、僕には分かりません。それはおじと祖父との間の話ですから」と続けた。ただ正恩氏が率いる北朝鮮の現体制と、自分の家族との現在の関係について直接語ることはなかった。