【8月24日 AFP】スペインの教会にあるキリスト絵画を善意で修復し、オリジナルとは似ても似つかぬものとなってしまったことで、「世界最悪の絵画修復」とやゆされている80歳女性、セシリア・ヒメネス(Cecilia Gimenez)さんが、世界的に話題の人となっている。

 ギメネスさんが「修復」した絵は、北東部ボルハ(Borja)の教会にある、スペイン人画家エリアス・ガルシア・マルティネス(Elias Garcia Martinez)が1910年に描いた「Ecce Homo(この人を見よ)」。いばらの冠をかぶせられ悲しげに天を見上げるイエス・キリストを描いたこの絵も、年月とともに傷みが目立ち始めていた。そこでギメネスさんが自主的に修復を試みたところ、顔は血色の悪いサルのようで、目鼻立ちはバランスが悪く、さらには頭を毛皮が覆っているような姿となってしまい、多くの苦情が寄せられたという。

 その一方で、ヒメネスさんが「修復」したキリスト画は、世界各地のネットユーザーたちに笑いのネタを提供し、スペインでは、修復された絵の顔の部分に、スペイン国王フアン・カルロス1世(Juan Carlos I)やマリアノ・ラホイ(Mariano Rajoy)首相を埋め込んだ独自のバージョンを投稿するネットユーザーも現れた。

 さらに、ヒメネスさんの修復画をゴヤやムンク、モディリアニらの名画に例え、ボルハ市に原画を復元する計画を思いとどまるよう求めるオンライン嘆願書には5000人もの署名が集まった。

 嘆願書サイトを立ち上げたユーザーは、修復された絵は「教会の天地創造説を巧みに批判し、新たな偶像の復活に疑問を投げかけるものだ」と同サイトでコメントしている。

 だが、元のキリスト画を描いたマルティネスの孫に当たるテレサ・ガルシア(Teresa Garcia)さんは、ヒメネスさんによる修復には全く感銘していない。国営テレビRTVEのインタビューでガルシアさんは、「これまで(ヒメネスさんは)衣服以外には手をつけなかった。今回、彼女は頭部にまで手をだし、明らかに絵を台無しにしてしまった」と不満を語った。

 その一方で、 ヒメネスさんの妹、エスペランサ・ヒメネス・スエコ(Esperanza Gimenez Zueco)さんは、「姉は世界で最善の信仰心をもって修復に取り組んだ」とヒメネスさんを擁護しながら、「ちょっと絵心を加えたかったのでしょう」と付け加えた。(c)AFP