【8月28日 MODE PRESS】1930年の創設以来、フランス・ロアンヌ(Roanne)で3世代にわたり受け継がれ、1968年から現在に至るまでミシュラン3つ星を維持しているレストラン「メゾン・トロワグロ」。1998年に3代目ミッシェル・トロワグロ(Michel Troisgros)が受け継ぎ、歴史を守ると同時に斬新な料理にも挑戦し、世界の美食家が憧れるグルメの殿堂として不動の地位を築いている。日本では、ロアンヌ以外でただ一軒、“トロワグロ”の名を冠したレストラン「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」を東京に展開。7月、同店のイベントにあわせて来日したミッシェル氏の息子でファミリー4代目となる26歳のイケメンシェフ、セザール・トロワグロ(Cesar Troisgros)氏に話を聞いた。

■トロワグロのエスプリ

 “トロワグロ”が手がけるのは、ファミリーの軸となる「メゾン・トロワグロ」をはじめ、同じくロアンヌで展開するカフェ/ブラッスリーの「ル・サントラル」とオーベルジュ「ラ・コリーヌ・デュ・コロンビエ」、さらに日本の「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」の4店舗。その全てに共通し、人を惹きつけるものは何かを尋ねると、「居心地の良い場所だということです」とセザール氏。「ファミリーのエスプリに“もてなしの気持ち”があります。トロワグロ一家は、料理人でありレストランを経営するファミリー。おいしい料理が根底にあり、それを中心にした時間と空間が人々を魅了しているのだと思います」

 ファミリービジネスであることとそのエスプリは、 事業展開にも大きくかかわっている。「新店舗のオファーはありますが、事業拡大に我々は積極的ではありません。今でもかなりの仕事があり、店舗を増やすことよりも、そのクオリティアップに集中しています。また、家族経営というエスプリを失いたくない。温かい雰囲気や団結を高く評価し、それを求めていらっしゃるお客様も多い。商売に走りたくはありませんね」

■17歳でシェフになると決めた
 
 トロワグロファミリーに生まれ育つ中で、料理人となり、4代目を継ぐと決めたのは17歳の時だったという。道を決めてから約10年、これまでで辞めたくなるほど辛い経験はあったかと尋ねると、「ない」と一言。「子どもの頃からレストランの中で育ち、一人前の料理人になる道のりは厳しく、多くのステップがあると知っていたので、大きな挫折はありませんでした。シェフに怒られることもありますが、“必要なこと”と折り合いをつけています」と言う。

 現在は父ミッシェル氏からお題を与えられる形でレシピ考案などクリエーションを行なっている。「食材の指定や去年の料理のバージョン変更などのお題を与えられ、試行錯誤しながら取り組んでいます。保留になるものもありますが、中には採用されてメニューに載ることもあります」

 フレンチに欠かせないワインも勉強中だ。「ワインは繰り返し飲むしかありません。加えて、ブドウ畑へ足を運び、その環境を見て生産者と話す。私の好きなアプローチです。おもしろいことに、生産者は料理人に似ているのです。同じ土地のブドウも、ブレンドによって異なるワインになります。そこにはこだわりやオリジナルの作り方がある」と言う。

■料理人として嬉しい瞬間

 いつでも嬉しい瞬間や心ときめくことがあるが、中でも「新しいレシピ、食材、生産者を知ること。旅をして、その国や食材、そして固有の食文化に触れることに心が躍ります」とセザール氏。さらに「料理は分かちあうもの。料理を通じてお客様とトロワグロの歴史を分かち合うことができ、喜んでいただけると最高に嬉しいです。フレンチの有名シェフに会える時間も特別で、とても興奮します」と語る。

 仕事外の食事でも自動的に料理のことを考えてしまうというが、休みの日はスポーツを楽しんでいるという。「ロアンヌは地方都市ですが、少し離れるとマウンテンバイクで走るにはぴったりの道がたくさんあります。ハイキングやきのこ狩りにも最高の場所。海まで行ってカイトサーフをすることもあります」と爽やかな休日の過ごし方を教えてくれた。

【店舗情報】
キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ
住所:東京都新宿区西新宿2-7-2 ハイアット リージェンシー 東京 1F
電話番号:03-3348-1234
営業時間:ランチ 11:30~14:00、ディナー 18:00~21:00
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