【4月29日 AFP】北京五輪の陸上・男子100メートルの金メダリストで、同種目の世界記録保持者のウサイン・ボルト（Usain Bolt）を指導するグレン・ミルズ（Glen Mills）氏は26日、ボルトが9秒50を切ることは可能だとしながらも、ロンドンの天候によっては同選手の努力は報われないかもしれないとの見解を示した。

　2004年からボルトのコーチを務めるミルズ氏は26日、国際陸上競技連盟（International Association of Athletics Federations、IAAF）との合同電話会見に臨み、ボルトが世界記録の9秒58を更新し、9秒49以下のタイムを記録できる可能性があると語った。

　ミルズ氏は「新記録を出すのは不可能だとは思わない。だが、ボルトにとって好条件が揃わなければならない。ロンドンの天候が味方してくれるかどうかは、私にはわからない」と話している。

　またミルズ氏は、5月5日に開催されるIAAFワールドチャレンジ2012（IAAF World Challenge 2012）のジャマイカ大会に、ボルトは100％健康な状態で出場するだろうと語った。ボルトが今シーズン初めて100メートルに出場する同大会には、第13回世界陸上大邱大会（13th IAAF World Championships in Athletics Daegu）の男子100メートルを制したヨハン・ブレイク（Yohan Blake）も200メートルで出場を予定している。

　ミルズ氏は、「ウサインは好調で、うまくやれると思う。彼は大会で走る準備はできており、期待を裏切らない良いレースを見せてくれるだろう」と語った。

　サッカーの慈善試合でボルトが怪我をしたという噂を否定したミルズ氏は、教え子のボルトが韓国で行われた世界陸上大邱大会の男子100メートル決勝で、フライング失格となった経験から教訓を得たことを明かした。

　「彼が大邱で学んだことは、自己満足に浸りすぎてはいけないということと、当たり前のことなんてないということだ。目の前にある目標を見据え、集中しなければならない。五輪を控え、彼はそれを理解しているし、もうフライング失格にはならないよ」

　ボルトは2008年に行われた北京五輪の男子100メートルと200メートル、ジャマイカ代表として出場した4x100メートルリレーで世界記録を樹立し、金メダルを獲得した。

　2009年に行われた第12回世界陸上ベルリン大会（12th IAAF World Championships in Athletics Berlin）では、自身が持つ世界記録を100メートルで9秒58、200メートルで19秒19に更新している。

　ボルトはよく「生きる伝説」として地位を確立すると口にしているが、ミルズ氏はボルトがそう主張することで3種目での五輪連覇へ集中力を高めていると語っている。

　「彼は『生きる伝説』というテーマを掲げることで、高いレベルの練習とパフォーマンスを続けるためのモチベーションを維持している。彼はロンドン五輪での連覇を目標に設定した。それは彼にとって究極のゴールだ」

　ミルズ氏はまた、ボルトが母国ジャマイカに3個の金メダルをもたらすことができれば、たとえ世界記録を更新することができなくても失敗にはならないとの考えを明かした。

　世界記録はボーナスのようなものだと話したミルズ氏は、「目標はタイトルだ。その過程で記録を更新できれば素晴らしいことだ。しかし、最も重要なのは新記録ではなく、ゴールラインまで走り抜いてレースに勝つことだ」と語った。

　この4年間で世界的にその名前が知れ渡り、名声を高めたボルトだが、練習に励む姿勢に変化は無かった。
　
　ミルズ氏は「ウサインはチャンピオンに必要なもの、高いレベルの練習とパフォーマンスを維持するために何が必要なのかを知っている。彼はスポーツ界の伝説になりたいんだ。そのためには、まだやるべきことがたくさんあると理解している」と語った。(c)AFP