【3月3日 AFP】バングラデシュ中央銀行は2日、貧困層向けの少額融資機関グラミン銀行(Grameen Bank)創設者でノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス(Muhammad Yunus)氏(70)を、同銀行の総裁職から解任した。ユヌス氏が2000年に総裁に就任した際、同行の株式の25%を保有する政府の承認を事前に得ておらず、国有企業の総裁就任規定に違反しているためと説明している。

 AFPの取材に応じた政府高官は、「法的に、ユヌス氏はもはやグラミン銀行総裁ではない。今後も同氏が総裁になる余地はない」と述べた。

 しかしグラミン銀行側は、ユヌス氏の総裁就任は「法的な手続きにのっとったもの」であり、同氏は「しかるべく総裁職にとどまる」と反論している。

■「マイクロファイナンス」生みの親、政府とは対立

 ユヌス氏は、貧困層に対する無担保小口融資「マイクロクレジット」の生みの親で、2006年にバングラデシュ人としては初めてノーベル平和賞を受賞、国際的にも高い評価を受けている人物だ。

 だが、バングラデシュのシェイク・ハシナ・ワゼド(Sheikh Hasina Wajed)首相や与党政治家らとの対立が激化しており、高齢であることなどを理由に、辞任圧力にさらされてきた。ユヌス氏が2007年に新政党の立ち上げを示唆したことが、政府との関係悪化の原因とみられている。

 ハシナ首相は前年12月、グラミン銀行を「私物化している」とユヌス氏を批判、同銀について「貧しい人々の血を吸い上げている」と糾弾した。同月、ノルウェー人ジャーナリストがユヌス氏について1990年代にノルウェー政府の援助金を使い込んだ疑惑を報じ、同氏はバングラデシュ政府の捜査対象となったが、ノルウェー側の調査で潔白が証明された。

 こうしたなか、アブル・マル・アブドゥル・ムヒト(Abul Mal Abdul Muhith)財務相は前月、ユヌス氏に改めて辞任を要求。同氏はグラミン銀行をめぐる公判のため、前月だけで3回も法廷に召喚されていた。

 ユヌス氏をとりまく一連の疑いに関して、ノルウェーのエーリック・ソールハイム(Erik Solheim)環境・開発援助相は「非常に悲しむべき展開だ。われわれが目にしているのは、バングラデシュ国内の権力争いだ。ユヌス氏は国内外で評価されおり、常に野党勢力を主導している」とノルウェー通信(NTB)に語った。(c)AFP/Shafiq Alam