【10月14日 AFP】中国における精神医療は、健常者を強制的に精神病院に入れる一方で必要な人に適切な精神治療が行われないなど、無秩序な状態にあると、人権団体が12日、警告した。

 南部・深セン(Shenzhen)を拠点とする人権団体「Equity and Justice Initiative」からAFPに電子メールで送られた報告書によると、2009年に発表された中国政府の公式統計では精神衛生上の問題を抱えた患者は1億人で、このうち1600万人が重症だという。

 報告書は、100件以上の事例と30の法律、報道記事300件を検証した。

 このなかから一例をあげると、南部・海南(Hainan)省で2009年、男が8歳の女児を殺害し遺体を切断した事件では、男に統合失調症の症歴があったうえ、以前にも高齢者2人を殺害していた前科があった。

 しかし、男は統合失調症の治療施設には収容されずに家族の管理下に置かれていた。だが、家族には男の行動を抑制することは不可能だったという。

 また、山東(Shandong)省では、農業に従事していた男性が、地元当局により何度も精神治療施設に強制収容された事例をあげている。この男性が北京の中央政府に陳情することを、地元当局が恐れたためだった。

 男性が収容された施設の院長も、精神衛生上は何の問題もない陳情者が多く収容されていることを認めている。だが、地元当局から収容するよう言われれば逆らえないのだという。

 国営メディアによると、現行の制度では、家族や親戚が「精神衛生上、深刻な症状に苦しんでいる」と言うだけで、人々は精神治療施設に送られてしまう。そして、彼らを施設から解放できるのも、彼らを施設に送った当人だけなのだ。(c)AFP