【9月17日 AFP】ユネスコ(UNESCO)の世界遺産に登録されているタンザニアのセレンゲティ国立公園(Serengeti National Park)で、公園内を横断する2車線のハイウエー建設計画が「動物たちの最後の楽園」をおびやかしている。

 生物多様性の専門家27人が連名で15日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した論評によると、計画されているハイウエーは、ケニア国境に近い公園北部のおよそ1万5000平方キロメートルを50キロにわたって横断する。専門家らは、ハイウエーによって公園内の環境が破壊されるとして、計画を推進するタンザニア政府に対し、公園のはるか南を迂回するルートへの変更を求めている。

■ヌーの大移動ルートを遮断

 専門家らは、ヌー130万頭が季節ごとに行う「大移動」のルートをハイウエーが遮断することを問題視している。

 ヌーは、草原の再生を助け、絶滅が危惧(きぐ)されているライオン、チーター、リカオンなどの捕食動物の個体数を維持するなど、セレンゲティのぜい弱な生態系において重要な役割を果たしている。

 専門家らは、フェンスや道路で動物の移動ルートを遮ったために生態系が破壊されてしまったカナダのバンフ国立公園(Banff National Park)、ナミビアのエトーシャ国立公園(Etosha National Park)、ボツワナのカラハリ・トランスフロンティア公園(Kgalagadi Transfrontier Park)の例を挙げ、「ケニアのマラ川(Mara Rver)を渡る移動ルートが遮断されるとヌーの個体数は30万頭以下にまで減少する」と警鐘を鳴らした。

 もしヌーの個体数が減れば、野火が増え、草の栄養分が減り、生態系は大気中二酸化炭素の発生源となってしまう恐れがあるという。

■来月の選挙視野に開発推進の動き

 タンザニア沿岸部から内陸のビクトリア湖(Lake Victoria)を経由し、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、コンゴ民主共和国(旧ザイール)をハイウエーで結ぶ構想は、約20年間ほど前からある。

 タンザニアでは来月に総選挙が迫っており、アフリカ中央部の鉱山開発に外国企業が多大な関心を寄せていることを背景に、ハイウエー計画が急きょ「最優先課題」となりつつあると専門家は指摘している。(c)AFP