【6月2日 AFP】独ナチス(Nazi)が第2次世界大戦中に、オーストリアでユダヤ人から没収した8000冊を超える本を保管してきたオーストリア国立図書館(Austrian National Library)は1日、それらの本を時価計13万5000ユーロ(約1500万円)で「買い上げ」、その金額をナチスの犠牲者へ贈ると発表した。

 これを記念し、同図書館のヨハンナ・レイヒンガー(Johanna Rachinger)館長が、Austrian National Fund for the Victims of National Socialism(国家社会主義の犠牲者のためのオーストリア国立基金)に象徴的に本を手渡す特別式典が行われた。

 1938年のオーストリアのナチス・ドイツへの併合後、ユダヤ人から奪われ、同図書館が保管している本は計8363冊。児童書から科学書、17世紀の神学論までとジャンルは多岐にわたる。図書館では元の所有者を探したが、追跡しきれなかった。基金の代表、ハンナ・レッシング(Hannah Lessing)氏によると、図書館はその代わりに時価での買い取りをすぐに承知したという。この買い取り額は「1930年代にオーストリアに移住してきたユダヤ人など」、これまでに何の補償も受けたことがないユダヤ人に贈られる。

 元々同図書館が保管していたナチスの略奪本は5万2403冊だったが2003年、図書館は正当な所有者へ本を返却することを決定し、これまでに3万5217冊を返却できた。逆に8363冊については調査をしても元の所有者がまったくつかめず、「相続人なし」との判断が下された。

 また図書館は写本、楽譜、カードなど8823点も保管しているが、これらについては返却の決定はまだ下されていない。

 オーストリアはユダヤ人を苦しめたナチスの行為の不当性を認めるしるしとして90年代、5000ユーロ(約56万円)を上回る額を犠牲者に支払うと決定したこともある。(c)AFP