【3月2日 AFP】地球温暖化の影響で海氷の溶解が進む北極海域から経済的利益を得ようと、中国が本格的な戦略調査を開始したと、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research InstituteSIPRI)が1日に発表した報告書のなかで指摘した。

 推定900億バレルの埋蔵石油が期待される北極海域については、カナダ、デンマーク、ノルウェー、ロシア、米国が領有権や埋蔵資源の配分などをめぐり対立している。この沿岸5か国を刺激したくないとの配慮から、これまで中国は北極への関心を表明することに慎重だった。

 しかし報告書によると、2013~2060年ごろの北極圏は夏季に氷が完全に溶解し、「北西航路(Northwest Passage)」の航行が可能となると予測されていることから、航路の短縮や未発見エネルギー資源の開発への期待も高まっている。欧州アジア間の船舶航路は、現在はスエズ運河(Suez Canal)経由のみだ。だが、北極海を通過する北西航路が開ければ航行距離が40%短縮される。

 こうした事実に中国が着目。これまで以上の物的・人的資源を北極調査に投入しているという。報告書によれば、調査の主眼は商業、政治、安全保障面における「氷のない北極海域」の中国への影響に置かれている。

 北極海の沿岸国でない中国は、北極の領有権を主張できる立場にはない。また、北極開発のあり方を協議する「北極会議(Arctic Council)」のメンバーでもない。しかし、かねてから中国は「領有権は国際関係における指針に過ぎない」と強気の発言を繰り返してきた。

 報告書は、中国が世界最大級の砕氷船を保有していることにも触れ、将来、北極開発に関する政治や法的な枠組み作りに中国が関与してくることも予想されると指摘している。(c)AFP