【12月5日 MODE PRESS】2000 年にパリでスタートしたアクセサリー・ブランド「ヨシコ クリエーション パリ(YOSHiKO CREATiON PARiS)」。オートクチュールをプレタポルテに落とし込んだ“ポップクチュール”という独自のスタンスを確立しながら、ワイズレッドレーベル(Y’s Red Label)とのコラボレーションや、新ライン「ワイクチュール」の立ち上げ、直営店のオープンなど、常に新たな展開をみせ、ブランドとしての着実な成長を遂げている。既存の枠に捕らわれることなく、前進し続けるデザイナーの梶谷好孝(Yoshiko Kajitani)に話を聞いた。

■インタビュー:梶谷好孝

―ラフォーレ原宿の直営店について

原宿は、私自身10代の頃から慣れ親しんだ街。ファッションやカルチャー、そして人々のエネルギーや好奇心が集まる世界的にみても稀な街です。その中心に位置するラフォーレに、昨年期間限定で店舗をオープンしたところ大きな反響があり、今回の出店へと繋がりました。この街に集まる人々にブランドが受け入れられたということを、光栄に思います。

店内には、ギャラリースペースを設けてあります。開店時には、片羽が雄で片羽が雌という稀少な蝶の剥製を展示しました。二つの性を持ちあわせた雌雄型の蝶は、生物学的に劣性で、成虫になるのもごく稀。私たち人間も、誰もがこの蝶と同様に男性的な側面と女性的な側面を持ち合わせています。それを、単なるコンプレックスとするのか、美しい個性と捉えるのか・・・これはブランドメッセージに通じること。今後も、私たちの想いを象徴するようなアイテムを展示していきます。

―ワイズ レッドレーベルとのコラボ

2 年ぶりにワイズ レッドレーベル(Y’s Red Label)とコラボレーションし、09年春夏コレクションのジュエリーを手掛けました。デザイナーの鈴木道子さんと今シーズンのテーマ「魔女」について何時間もセッションを重ねる中で浮かんだのは、インスピレーションによる人間の繋がりや、体内から放たれるエネルギーのイメージ。それを形にしたのが、今回誕生した「光のジュエリー」です。ショー会場は暗い森の中。闇から登場した服が光を放った瞬間、会場全体に驚きの衝撃波が走ったのを肌で感じました。皆で作りあげた作品が、一瞬で空間を変える様子を目の当たりにし、改めて自分の仕事の意味を認識しました。

最近のアートは、どんどんテクノロジー寄りになってきています。だけど、単に技術を競うだけのテクノロジーならアートである必要はなく、学問の分野でやればいい。「光のジュエリー」には、テクノロジーを追い求めるあまり、美を忘れがちな現代に対してのアンチテーゼを込めています。目に見えない世界を、美しく形にするのが私たちの職業ですから。

―オートクチュールライン「ワイクチュール」

顧客からの別注オーダーやセレクトショップからの依頼が重なったことがきっかけで、08/09年秋冬シーズンから、オートクチュールライン「ワイクチュール」を立ち上げました。本物の卵と貴金属を組み合わせたジュエリーなど、素材の段階からこだわり抜いた作品ばかりです。心の底から自分でいいと思えるようなデザインは、一生のうちに何百型も出来るものではありません。毎シーズン決まった形で展示会を開くのでなく、クリエーションの軸としてじっくり育てていきたいです。

―ブランドについて

日本は、流行に流されやすい国。しかし、私の商品を買ってくれるのは、流行りでなく、自分の意志で商品を選んでいる人。自分らしさ、つまり個性を表現するツールとして手にとってくれている。ジュエリーは身に付けた人の個性と合わさることで、初めて命を持ち、世界にひとつだけのものになります。

表現したいものがあり、伝えたい気持ちが共有でき、クリエーションが生まれる、という基本はスタート時から全く変わっていません。勿論、スタッフやブランドを守るためのビジネスは大切。多くのブランドが出来ては潰れていく現状ですから。でも、周囲のペースに巻き込まれて、ブランドとしての根本が揺らいでは何の意味もありません。クリエーションを支持してくれている人たちに対し、常に誠実に向き合うことが私の役目だと思っています。

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 パリのセレクトショップ「コレット」で発表したデビューコレクションから、常に鮮烈な作品を世に送り出し、第一線で活躍し続ける梶谷。慎重に言葉を選びながら「頑張ったから今の自分があるとは思わない。厳しいけれど、人以上の努力も才能も、単なる前提にすぎないから。その中でどう動くか思考するセンスが重要」と語る姿は、着実に前進し続けるブランドそのもの。女優や歌手とのコラボレーションや、映画のジュエリー制作など、他分野の表現者からのオファーが絶えないのも、もの作りに対する真摯な姿勢に惹かれるからこそのことだろう。これから先も、どんな進化を遂げていくのか目が離せない。(c) MODE PRESS

【関連情報】
◆特集:ヨシコ クリエーション パリ
◆ワイズ レッドレーベル09年春夏コレクション<写真>
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