【4月11日 AFP】霊媒師のMartha Katsandeさん(51)は、アシ(葦)のマットに座り、ときたま嗅ぎタバコに鼻を近づけてはうめき声や叫び声を上げる。ジンバブエの混乱の原因とその解決策に対する答えを求めて、先祖の霊を呼び集めているのだ。

「ご先祖様たちは激怒しておられる。それが災厄の原因だ。解放戦争のときに流された血を洗い清めるための儀式を国が行わなければ、国の未来はない」とのご託宣がくだる。

 「解放戦争」とは、ローデシア時代の1970年代、当時のイアン・スミス(Ian Smith)白人少数政権に対し、黒人多数派支配への移行を求めて立ち上がった黒人たちのゲリラ闘争のこと。約3万人が命を落としたとされる。

 Katsandeさんら霊媒師たちにとって、前週の大統領選をめぐる数々の不正行為などは問題ではない。問題なのは、過去の罪への贖い(あがない)なのだ。だから、選挙が何度行われようとも「子供だまし」に過ぎないと言う。

 伝統治療師協会の会長もつとめる大学教授も、Katsandeさんと同じ見方だ。「戦争終結のしるしとして、そして戦争時の罪を洗い清め、霊たちが国の運営方法について指導者たちに助言する機会として、政府主催の儀式が行われてこなかったこと」が根本的な問題だと語る。

 3月29日に行われた総選挙では、最終結果が依然として発表されず、ロバート・ムガベ(Robert Mugabe、84)大統領が再選された場合には暴動が発生するとの懸念もある。この国はまた、ムガベ大統領が2000年から本格化した土地改革(白人の農地を接収)を機に、経済の低迷、天文学的なインフレ率、80%を超える失業率などの諸問題に見舞われている。

 Katsandeさんは、ムガベ大統領がこうした問題を西側諸国のせいにするのは間違いだと断言する。あくまでも、伝統儀式を怠って先祖の霊たちを怒らせたことが元凶なのだ。「西側諸国による経済制裁はたしかに痛いが、ご先祖さまたちによる制裁は何にもまして恐ろしいのです」(c)AFP/Susan Njanji