【10月29日 AFP】チャドから子ども103人を密かに連れ出そうとしたとしてフランスの援助団体のメンバーらが現地当局に拘束された事件について、ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)仏大統領は28日、「違法で容認できない行為だ」と同団体を非難した。

 大統領報道官によると、サルコジ大統領はチャドのイドリス・デビ(Idriss Deby)大統領と電話協議し、拘束されたフランス人9人の状況を聞いたという。

 これに先立ってラマ・ヤド(Rama Yada)仏外務・人権担当閣外相は、拘束された同団体のメンバーの行動は誘拐とみなされても仕方なく、責任を取らなければならないと述べていた。またユニセフ(UNICEF)は「子どもたちの大半はチャド出身で、孤児だという証拠はない」と指摘している。

■新たに1人を逮捕、拘束者らは29日中にも起訴か

 事件は、援助団体「Arche de Zoe」がスーダン・ダルフール(Darfur)地方に隣接するチャド国境で1歳-10歳の子どもたちを「死から救うために(同団体)」出国させようとしたもので、同団体のメンバー6人と記者3人の計9人のフランス人と、子どもたちを移送するチャーター便のスペイン人乗組員7人が、同国東部のアベシェ(Abeche)でチャド当局に逮捕された。

 また、28日には新たに同チャーター便のベルギー人パイロットも拘束された。17人は29日にも起訴される見込みだ。

 子どもたちは現在、アベシェにある孤児院に収容されている。

■団体側は「紛争孤児との証拠がある」と反論

 パリの同団体幹部は子どもたちの身元について、「全員がダルフール紛争の孤児で、頼れる親戚もないとの地元氏族長らの証明書を持っている」と反論した。

 報じられたところによると、子どもたちはフランスで養子縁組を行うか、里親に引き取られることになっており、希望者らは同団体に2800(約46万円)-6000ユーロ(約100万円)を支払っていた。

 当初の計画では1万人の子どもを欧州に移送する予定だったが、計画には養子縁組あっせん団体や人権団体から「無責任」との批判が相次いでいたという。

 同団体は政府からチャド国内で仏空軍機や仏軍施設を使用する許可を得ているが、仏政府は数か月前に、同団体の活動計画について違法行為の恐れがあると警告。7月から仏警察が、同団体の活動内容を捜査していた。
 
 ただ同団体はこれについても、仏政府が計画に待ったをかけた事実はなかったとしている。

「Arche de Zoe」は、2004年のインド洋地震津波災害の被災者を援助する目的で、ボランティアの消防士Eric Breteau氏により設立された。(c)AFP/Sonia Rolley