【京都 13日 AFP】訪日中の温家宝(Wen Jiabao)中国首相は13日、京都を訪問した。地元大学生と野球をするなど、民間の交流を通して日中間の「氷を溶かす旅」に人情味を加え、親しみやすさをアピールした。

 京都に到着した温首相は琴の演奏で歓迎された後、京都迎賓館で裏千家のお茶のもてなしを受けた。

 また、農家を視察したり、中国語を勉強中の学生とも交流。続いて、若いころに経験した野球の腕前を披露した。

 13日朝、都内のホテルを出発前に温首相は報道陣に対し、「多くの日本人が、(日中間の)『氷を解かす旅』の目的は達成されたと言っている」と述べた。

 12日朝には、都内の公演をジョギングし、市民と会話したり、太極拳を披露する一幕もあった。

 中国首脳としては7年ぶりとなった今回の訪日で、温首相は「戦略的互恵関係」の重要性を強調。「両国は不幸な歴史を共有するが、現在の友好的な関係はこうした過去にふさわしいものだ」と述べた。

 これに対し、前年の首相就任以来、日中関係の改善に努めてきた安倍晋三首相は、温首相がの国会演説を「歴史に残るだろう」と評価。「日中の人々の相互理解が深まり、対話が続くと強く信じている」と話し、「謝謝(シェシェ)」と中国語で礼を述べて発言を締めくくった。

 2005年、日本側の歴史認識に激怒した中国人の抗議デモで、在中国日本大使館や日本料理店の窓が割られた事件から2年。状況はずいぶん変わった。

 一方、多くの日本企業が労働力や購買客を周辺国に求める中、両国の経済関係はますます密接になっている。

 有識者らは、日中双方とも世界の中でより大きな役割を果たすためには、安定が必要だと考えていると指摘。中国が来年の北京五輪で国威発揚を狙うのに対し、日本は国連安全保障理事会(UN Security Council)の常任理事国入りを求めて支持をかき集めている。

 東アジア情勢に詳しい東京外国語大学(Tokyo University of Foreign Studies)の井尻秀憲教授は、「日中両国政府とも、民間交流と同程度の水準まで政治関係を改善する必要があることを認識している」と分析している。

 写真は13日、京都迎賓館で裏千家のお茶のもてなしを受ける温家宝首相(右から2人目)。(c)AFP/Itsuo Inouye