【マジュロ/マーシャル諸島 9日 AFP】「結核撲滅計画」が3年前に始動したマーシャル諸島では、前年来、結核が流行する兆しを見せている。

 保健省によると、2006年度の新たな結核患者は126人。2005年度の121人からは増加傾向にあることから、米疾患対策予防センター(US Centers for Disease Control and Prevention)の結核コンサルタントであるSubroto Banerji氏は、「憂慮すべき事態だ」としている。

 同国の結核感染率は、太平洋地域平均の約4倍、米国の47倍となっている。しかしながらBanerji氏は、「保健省は結核予防に最善を尽くしている」と、政府の取り組みについては評価している。政府が結核撲滅に乗り出してから結核感染率が減少に転じるまでに10年かかるのが通例である。

 同国の人口は6万人と比較的少ないものの、居住区域は約130万平方キロに及び、アクセス手段は小型ボートのみという島が大半を占める。こうした地理的要因が、同国の結核予防におけるネックになっている。

 同国では糖尿病患者が多いということと、結核の治療に最低6か月を要するという点も、結核を抑制する上での大きな障害になっているという。

 糖尿病患者が結核に感染すると、もともと人体の免疫系が損なわれているために、結核の克服は難しくなる。さらに、最低6か月を要する投薬療法については、初期段階で症状が消えるため、患者は「完治した」と勘違いし、治療を中断するケースが多いという。

 治療を中断すると、結核菌に耐性ができる危険性が高くなる。同国ではこれまでに、複数の薬剤に耐性を持つ「多剤耐性結核」が2例報告されている。多剤耐性結核は、さらに長い治療期間を要し、高額かつ中毒性の薬剤にさらされる危険性も増えることになる。

 写真は、首都マジュロ(Majuro)の人口過密地域で、トタンで作られた家の前で遊ぶ子どもたち(2004年9月4日撮影)。(c)AFP/Suzanne MURPHY