【東京 7日 AFP】日本で公開されているソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)の新作、フランス最後の王妃の生涯を綴った映画「マリー・アントワネット」(Marie-Antoinette)が日本女性の心を掴んでいる。

 公開初日の1月20日から2月1日までに87万5千人の観客を動員し、興行収益は既に10億8千万円に達している。映画配給会社「東宝」のスポークスマンは「今週半ばまでに100万人の動員数を突破したい」と、20億円の収益を見込んで自信たっぷりに語った。

■マリー・アントワネットの商品は日本市場でどう受け入れられるのか?

 映画のキャンペーンは、マリー・アントワネットにちなんで作られた様々なローズのお菓子を始め、王妃の居間や衣装などを特集した企画が次々に行われた。このソフィア・コッポラのポップな映画は、日本全国275カ所の映画館で公開中だ。

 同キャンペーンを行っている「東北新社」の渡辺陽介氏は「この映画は全ての年代の女性をターゲットにしています。ソフィア・コッポラを知らない人にでも、この作品のフェミニンさに魅了されることでしょう」と説明する。

 更に「若い女性は、映画の中のケーキやマカロンなどの様々なお菓子、お洒落なドレスやアクセサリー、ファッショナブルな演出に心打たれるはずです。また大人の女性には、マリー・アントワネットの強い人間性、そしてフランス最後の王妃として生き続けた女性の精神に惹かれることでしょう」。

■マリー・アントワネットは日本女性にとって、美徳と苦難を秘めたヒーローその者

 軽薄なオーストリア皇女時代から、フランスに渡り、若干14歳でルイ・オーギュストと結婚。その後フェンゼル伯爵との叶わぬ恋、善良だが退屈なルイ16世との悩ましい生活、そしてバスチーユ牢獄でのギロチン刑に至るまで、彼女の波瀾万丈な人生に共感する女性が多い。

 日本でのマリー・アントワネット人気は、1970年代の少女漫画「ベルサイユのばら」に始まる。劇画家・声楽家の池田理代子氏が1974年に制作し、以後「宝塚歌劇団」がミュージカルに編成し、女性ファンの絶大な人気を誇った。公演は2000回に及び、400万人以上の観客から喝采を浴びた。

 そして新しい昨年末から春にかけて、新しいタイプのミュージカル「マリー・アントワネット」が脚本家ミヒャエル・クンツェ、音楽家シルヴェスター・リーヴァイ(ウィーンの「エリザベス」や「モーツァルト」等ヒット作の多い)のもと、帝国劇場で公演されている。

 このブロードウェーに値するミュージカルは、世界に先駆け日本のみ特別に昨年11月より発表された。作家遠藤周作の小説「王妃マリー・アントワネット」を元に、空想歴史小説的な色調と自由な台詞で迫力ある舞台に仕上がっている。

■‘歴史小説’の枠を飛び越えたソフィア・コッポラ作「マリー・アントワネット」

 一方、映画「マリー・アントワネット」について、東北新社の渡辺氏は「もちろん彼女は日本でも大変有名です。ミュージカルにちなんだ商品も出ていますが、我々のマーケティングによると、このソフィア・コッポラの映画は『歴史小説』の枠を飛び越えているのです」と断言した。

 「この作品は甘いラブストーリーではありません。ミュージカルの商品は宝塚が好きな女性に限定されていますが、この映画はマリー・アントワネットに共感する全ての女性のために、新しいディレクションに向かっているのです」とマーケティング的な戦略を説明する。

■昨年11月には伊勢丹で催事を開催

 昨年11月には、新宿「伊勢丹」でフランスプレタポルテ協会の協力を得て、12人のクリエーターがマリー・アントワネットのエスプリを服に表現し発表した。作品にはオーガンジーや羽、レースやリボンがふんだんに使われていた。

 そのカタログの中であるデザイナーはマリー・アントワネットを「歴史上初めてファッション・ヴィクティムになった女性」と形容した。

写真は2006年11月10日、東京・新宿にある百貨店「伊勢丹」にて撮影。マリー・アントワネットの催事会場の様子。(c)AFP/Yoshikazu TSUNO