【エルサレム/イスラエル 29日 AFP】28日、イスラエル史上初めて、アラブ系イスラム教徒として中道左派労働党所属のガレブ・マジャドレ(Ghaleb Majadleh)氏(53)の内閣入りが決まった。建国以来約50年間、アラブ系住民はユダヤ人国家における少数派として、国政の中心から疎外されていると感じ続けてきた。

 イスラエルの人口約700万人のうちアラブ系住民は約130万人。ほとんどは1948年の建国時、周辺のアラブ諸国へ難民として脱出することなく留まったパレスチナ人約16万人の子孫である。ユダヤ系同様、イスラエルの選挙権を持ち、また定員120の議会の中ではアラブ系政党が10議席を占める。しかし、イスラエル軍には従軍しない。

 一方、両親あるいは祖父母のひとりでもユダヤ教徒であれば市民権を認める「帰還法(Law of Return)」の効果で世界各地からのユダヤ人移民流入が増加する中、アラブ系の人口比は減少し続けている。

■ 生活水準は高いが資金が少ない

 ヨルダン川西岸(West Bank)やガザ地区(Gaza Strip)在住のパレスチナ人と比較した場合、イスラエル国内のアラブ系の生活水準は10倍も高いが、アラブ系居住地域の議会では「ユダヤ人系自治体と比較し、インフラ整備や開発に支給される資金が少ない」と批判があがっている。

 特にユダヤ人入植地建設のためのアラブ系居住区の公有地の没収は、アラブ系にとって大きな不満となっており、毎年3月30日の「土地の日」には恒例の抗議行動の主要テーマとなっている。

 アラブ系住民にかかるもうひとつの圧力は、ユダヤ系イスラエル人に広範に見られる排他主義である。アラブ系の存在は、人口分布的にも治安的にもユダヤ人国家イスラエルに対する脅威だとみなすユダヤ系が多く、アラブ系の国外移住を促進すべきだと主張する。

 「イスラエル民主主義研究所(Israel Democracy Institute)」の昨年の調査によると、ユダヤ系回答者のうち62%がこうした見解を持っており、3月の議会選挙においてはアビグドール・リーバーマン(Avigdor Lieberman)副首相率いるロシア系移民政党の政治要綱の柱となった。現在、戦略脅威担当相を兼任するリーバーマン副首相は、今回のアラブ系マジャドレ氏がどの行政機関も担当しない「無任所大臣」として任命されることについて、閣僚内で唯一反対した人物だ。

 2006年の「イスラエル民主主義指標(Israeli Democracy Index)」でも、ユダヤ系とアラブ系の関係は良好だとする回答者は14%のみで、2つのコミュニティの乖離は明白だと考える者が多いことが示された。

 歴代のイスラエル政権はユダヤ系、アラブ系の融合に関する問題をそれぞれ独自の監視機関に任せてきた。

 2000年7月、最高裁はアラブ系住民が特に雇用の局面で差別を受けていることを認めた。また2003年9月には、同判決後2年半もの間、政府が何も対策を講じなかったとし、専門委員会が政府を批判した。

 写真は同日、北部Baqa el-Gharbiyaの自宅でのマジャドレ氏。(c)AFP/RONI SCHUTZER