【4月10日 東方新報】最近、中国各地で「校园餐(学校給食)」をめぐる腐敗の取り締まりに進展が見られている。ここ数年、複数の地域で給食関連の特別調査・整備が進められており、「学生の口から食を奪う」行為を厳しく禁止している。

■「学生が実際に口にしたのは60パーセント未満」

 最近、メディアが報じたところによると、山西省(Shanxi)臨汾市(Linfen)汾西県の第2中学校の元校長・趙孟鎖(Zhao Mengsuo)が、学校の食堂予算から420万元以上(約8389万円)を着服・不正流用していた事件の詳細が明らかになった。

 今年1月、山西省の規律検査・監察委員会が制作した反腐ドキュメンタリー番組『護航』で、趙元校長の件が報告された。

 この事件は、同省で進められていた「学校給食」の特別是正調査の一環で発覚したもの。2023年4月以降、山西省全体で小中学校の食品安全および給食費管理の問題に対する徹底調査が実施されていた。調査によって、趙孟鎖は2021年に第2中学校に赴任後まもなく、給食費の報告額と実際の支出に差異があることに気付き、制度の隙を突いて私的な利益を得るようになったという。

■趙元校長はドキュメンタリー内で次のように語っている:

「2つのルートで余剰金が出る。一つは、実際の食事量と報告された量の差、例えば中学生には包子(中国の点心のひとつ)3個、小学1年生は1個しか食べないと仮定すると差額が生まれる。もう一つは、管理職らが運営の都合上、生徒から徴収した朝食・夕食代をすべて専用口座に入れていなかったこと」

 報道によれば、趙元校長の在任中に、汾西第2中学校が食材購入のために使用した総額は1072万元(約2億1412万円)。しかしそのうち420万元以上(約40パーセント)が着服・流用・圧縮されており、さらに「劣悪な食材の使用」「肉料理のはずが実際は野菜ばかり」「余った食材の行方が不明」といった問題もあり、生徒が実際に口にしたのは全体の60パーセントにも満たなかったとされる。

 この「学校給食」是正プロジェクトにより、汾西県の規律検査・監察機関は合計31件の問題情報を把握し、関係者18人に対して処分を下した。山西省全体では、すでに「給食費の私的流用」「入札・調達への不正介入」「リベートの受領」などに関する案件が1827件立件され、1994人が処分を受けている。

■各地で「学校給食腐敗」の是正進む

 ここ数年、各地で「学生一人一人の給食費が確実に使われる」ことを目指し、給食関連の徹底的な取り締まりが進んでいる。

 例えば、校長が留守家庭の子どもから給食費を奪い、幹部の食事会に流用していた例や、生徒が毎回10元(約199円)を支払っても満足な食事が出ないケースなど、深刻な不正が明らかになっている。

 2024年2月には、江西省(Jiangxi)撫州市(Fuzhou)南城県の泰伯学校でも同様の給食腐敗事件が報道された。

 撫州市では、市民の身近な腐敗・不正を重点的に取り締まる方針のもと、学生食堂に特化した是正活動を推進中。全市の規律検査機関が175件の通報を受理し、106人を立件・処分している。また、江西省内で初めて、学校給食の食材供給に関する品質管理プラットフォームの試験導入を行い、食材・情報・資金の全流れを一括追跡できるシステムを構築した。

 同じく今年2月、重慶市(Chongqing)教育委員会は「学校給食の特別是正を継続的に推進し、食の安全と経費管理の『二つの底線』を守る」ため、市内7部門が共同で「中小学校の給食安全と給食費管理に関する監督管理規定」を発表した。

 この規定では、米・小麦・油・肉・卵・乳製品などの主要食材を一括集中調達すること、食堂の営利活動の禁止、外部委託や名目上の委託の厳禁が明確に定められており、食品安全上の問題があれば市民による通報が可能となっている。

 また、公立学校の給食費は財政の代理管理口座に組み込まれる仕組みとなり、同一の食材・価格・献立で教職員と生徒が同じ食事をとることが求められる。寄宿制ではない学校については、校内に食品売店を設けることを禁止し、市民の代表(社会監督員)を食堂の巡回チェックに参加させる制度も導入されている。

■中央政府も全国レベルで強化へ

 2024年1月8日に開催された中国共産党中央規律検査委員会第20期第4回総会の公報では、次のような重点整備方針が明示された:

「学校給食」「農村の集団資産管理(三資)」「農村振興資金の監督」「医療保険基金の運用管理」「高齢者福祉サービス」などにおける重大問題への対処を強化し、葬儀関連分野の腐敗是正を含む特別整備行動を着実に進めていく。

 このように、給食費の不正使用に対しては、地方・中央の両レベルで取り締まりが本格化しており、「学生の食事が削られるような腐敗は絶対に許さない」という姿勢が鮮明になっている。(c)東方新報/AFPBB News