最低所得補償で社会活動活発に、労働意欲減退せず ドイツ研究所
このニュースをシェア

【4月10日 AFP】ドイツの研究所が行った「ユニバーサルベーシックインカム(UBI、すべての市民に無条件で最低所得を補償する制度)」に関する最新研究で、UBI受給者の労働意欲が減退することはなく、精神的な健康状態も相対的に良好であることが分かった。
研究はドイツ研究所(DIW)が3年間にわたって実施。月額1200ユーロ(約19万円)を労働義務なしで受け取った107人と、受給しなかった1580人とを比較した。
9日に公表された結果によると、受給したグループの間で離職傾向が強まることは認められなかった。
このグループの生活満足度は高く、非受給グループに比べ、社会活動に費やす時間は週平均約4時間多かった。
DIWの研究者は、「レストランに行ったり映画のチケットを購入したり、集団でレジャーに参加したりするなど、社会活動には出費が伴うことが多い」と指摘。社会活動の多さは、金銭的な余裕と関連しているとの見方を示した。
一方、受給グループの間で、政治的信条や、リスクを取ることへの姿勢といった心理的特性に関しては、非受給グループとの差異は見られなかった。
研究に参加したウィーン経済・経営大学のスザン・フィードラー教授(心理学)は、受給グループについて「中核的な性格が変わったからではなく、可能性が変わったから異なる行動を取った」と説明した。
人工知能(AI)の活用拡大により大量失業が招かれるとの懸念が広がる中、UBIはここ数年、政策手段として真剣に検討されるようになっている。(c)AFP