【4月9日 Peopleʼs Daily】「起きてください!」午前3時40分、ガイドの催促する声が周思奇(Zhou Siqi)さんの耳に響いた。彼は寝袋から這い出てウィンドブレーカーとスノーブーツを履き、素早く準備を終えた。軽い食事を済ませると、同行の謝旺新(Xie Wangxin)さんとともに「崗日喀雪山(ガンシュカ雪山、Gangshka Snow Peak)」のベースキャンプの小屋を出て、ヘッドランプを点灯し、峰を見上げた。

「ガンシュカ雪山」は青海省(Qinghai)の「海北チベット族自治州(Haibei Tibetan Autonomous Prefecture)門源回族自治県(Menyuan Hui Autonomous County)」に位置する。主峰は海抜5254.5メートルで、祁連山脈(Qilian Mountains)の東部で最も高い峰だ。一年中雪に覆われており、登山の難易度は比較的軽いので、多くの登山愛好家は「人生第一の雪山」と呼んでいる。

 周思奇さんが目指しているのは「ガンシュカ雪山」の3番目の峰で海抜5005メートルの頂上である。雪山に登るのは人生でこれが初めてだ。

 彼は黒竜江省(Heilongjiang)の出身で、大学院の2年生だ。2か月前から準備を始め、登山用品を購入し、関連の技術を学び、体力強化に努めてきた。

 午前4時30分、標高4300メートルを超えるベースキャンプはまだ暗闇に包まれ、気温は摂氏マイナス20度前後だ。ガイドの指示に従い、彼と謝さんは、先発者の足跡をたどった。 「ルートを外すと、簡単に腰まで雪に埋まる」と彼は言う。

 3時間の登山の後、彼らは長さ約200メートルの約60度の傾斜の難所に到着した。「ここが頂上直前の最後の難所だ」とガイドが教えてくれた。ガイドは簡単な装備を用意し、彼ら2人の体調をチェックし、2人にアイゼンの装着とアッセンダー(登高器)の取り付け方法を指導した。

 ふと見上げると、頂上まで続いている安全ロープが目に入った。周さんは先にスタートし、足場を確保しつつ引き綱を締め、アッセンダーを上げる動作を繰り返した。彼はすぐに登攀のリズムをつかんだ。そして8時20分、「ガンシュカ雪山」3番目に高い峰の頂上に到着した。雪を頂いた山々がどこまでも続いている。耳をつんざく風の音の中で、周さんは喜びで胸がいっぱいになった。「頂上は最高だ!」

「登頂できて本当に嬉しい。諦めなくてよかった。登山は大変だったけれど、本当に頂上に立つ価値があった!」、謝旺新さんはこう話す。謝さんの体力は難所を越える際にほとんど尽きかけていたが、登頂への意欲と仲間の励ましが闘志を再び燃え上がらせ、ついに頂上に立つことができた。

 現在、「ガンシュカ雪山」景観区では、九つのアウトドアスポーツクラブが提携して登山活動を行っている。景観区では登山客に食事、宿泊、送迎、緊急医療などのサービスが提供され、アウトドアスポーツクラブは登山チームの編成と山岳ガイドの手配を担当している。

 21歳の李啓雲(Li Qiyun)さんは、これらのアウトドアスポーツクラブの一つで、プロのガイドを務めている。彼は「高山協力証」と「登山ガイド証」を取得して、多くの登山者の夢をかなえる手伝いをしてきた。

 彼は「登山中は、登山者の心身の状態を常に注意深く観察しなければならない。技術的なサポートや安全指導をするだけでなく、適切なタイミングで励まし、自信を持たせることも必要だ」と話す。「登山者の登頂を手助けした時には達成感がある」と言う。

 雪山登山に参加するには、健康診断結果の提出と当局への届け出が必要だ。「登山中に誰かが救助を必要とする場合、我々はその人をベースキャンプまで護送する手配をする。状況に応じて、その場で休むか、引き続き救助を続けるかを決定する。下山を続ける場合は、ガイドが指定の場所まで同行し、風景区の安全担当者がその後の作業を引き継ぐ」、李さんはこう説明する。「ガイドはチームを率いるだけでなく、登山装備の定期的なメンテナンス、難所における安全ロープの摩耗状況の確認と適時のメンテナンスも必要なのだ」という。

 観光客の完ぺきな安全確保が、登山活動の発展の前提条件だ。2024年5月景観区の管理会社「青海新視界旅游文化開発」が設立され、「ガンシュカ雪山」景観区の運営をスタートした。信号塔の設置、運搬馬隊の用意、交代制のサポートスタッフ、専門的な医療補助設備など、景観区は様々な手段を講じて、登山客の登山体験をより良いものにしている。

「日中は医師が景観区に常駐し、高山病やけがを負った登山客に迅速に対応する。夜間は大人数の安全担当者が宿直し、いつでも緊急事態に対応できるようにしている」、景観区の安全担当者はこのように説明する。

 省内の西寧市(Xining)から来た旅行者・李懐民(Li Huaimin)さんは、過去に何度も「ガンシュカ雪山」のベースキャンプを利用し、その変化を目撃してきた。「以前は『七彩氷瀑』からベースキャンプまでの道のりはとても歩きにくかった。今は3.5キロの道のりの100メートルごとに標識が設置され、距離と海抜が表示されている。この山の整備状況は大幅に改善された」と話す。

 徐々に、多くの観光客がこの雪山を訪れるようになった。日帰りコース、登頂コースなど、様々なコースが観光客の多様なニーズに応えている。また、火鍋の宴会、コンサート、無形文化遺産の展示などのイベント催しが旅の楽しみを増やしている。李さんは「より良い、より安全な登山が楽しめるようになった。この景観区は観光客のことをよく考えている。それで来訪者が増加しているのだ」と話している。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews