【4月7日 Peopleʼs Daily】遠洋科学調査船「深海(Shenhai)1号」が有人潜水艇「蛟竜(Jiaolong)」を搭載して香港のヴィクトリア湾、チムサーチョイのオーシャンターミナルに停泊している。「2024年西太平洋国際航海科学調査隊」が45日間の海洋調査を終えたのだ。

 中国が独自に設計し自力で組み立てた初の7000メートル級有人深海潜水艇「蛟竜」は、09年の初潜航以来、300回以上の潜航を完了し、延べ900人以上の研究者がこの艇に搭乗した。この艇は世界の深海探査を強力にサポートしてきた。

 今回の45日間の海洋調査では、メキシコ、スペイン、カナダなどから8名の外国人科学者が初めて「蛟竜」に乗り、中国の科学者と共に深海を探索調査した。この航海では「蛟竜」による有人深海潜水が合計18回実施され、最大潜水深度は5600メートルに達し、貴重なサンプル資源と重要なデータが収集された。

 調査に参加したメキシコ国立自治大学の博士課程の学生であるジュディス・ポサダス(Judith Posadas)さんは「蛟竜号が海に沈んでいく時の音をはっきり覚えている。その瞬間、海が私たちを新しい世界へ招き入れてくれるように感じた」と、感動の瞬間を研究日誌に記している。

 昨年8月20日、ポサダスさんは右舷要員として初めて「蛟竜」に乗り込み、中国人の潜航員の張奕(Zhang Yi)さんと斉海濱(Qi Haibin)さんと共に302回の潜航任務を遂行した。

 航行時刻7時(北京時刻の5時頃)、「蛟竜」は母船「深海1号」の後部甲板からウィンチで吊り上げられ海面に下ろされた。注水を完了した「蛟竜」は毎分35メートルの速度で深海へと潜航した。

 チーフパイロットの張奕さんは、唯一インド洋、太平洋、大西洋に潜航した経験を持つ中国人女性潜航員だ。彼女は、50回以上の潜航を経験しており、深海作業に精通している。

 彼女は「今回参加した外国人科学者のほとんどが初めて潜水艇で海底に潜る人たちだったので、潜航前に潜航計画と操作の要点を入念に打ち合わせした」と話す。

 水深2000メートルを超える作業海域に到着した。深海は静かで暗い。「蛟竜」が前方の海底を照らす光線を放つと、色とりどりのイソギンチャク、冷水サンゴ、海綿が水中で軽やかに漂い、ヒトデ、ナマコ、ウミユリが現れたかと思うと消える、まるで神秘的な「深海の花園」の絵巻物のような光景だったという。

 張さんは艇内から巧みに機械アームを操り、深海生物や水試料を採取し、抽出管を使って海底の堆積物を採取した。彼女の隣ではポサダスさんが艇外の様子を注意深く観察していた。

 6時間以上経過した後、「蛟竜」は再び海面へと戻ってきた。ポサダスさんは「『蛟竜』の中で目にした光景は言葉では言い表せない夢のような世界だった」と感慨冷めやらない様子でこう語った。

 シンガポールの海洋科学者・蔡嘉慧さんも潜水の体験について興奮気味に語った。「中国の潜航員がサンプリングを担当し、我々は観察記録とサンプル目標物のアドバイスを担当した。今回の国際合同探査は『科学に国境はない』という真理を如実に示した。海底の生態系を自分の目で確かめることができ、海洋環境についてさらに直感的に理解することができた」

 調査隊は30以上の観測地点で海洋環境と生物多様性の定例調査を実施し、深海生物、海水、堆積物などのサンプルを採取するとともに、1000キロメートル以上の「多波束測線」(扇状に広がる複数の音波を同時に海底に照射し、その反射波を使った地形データの解析)を完成させ、調査海域の海底地形と水深に関する詳細な情報を得た。

 母船「深海1号」に戻った後も中国と外国の科学者たちの共同作業は続いた。母船の潜水器監視制御センターで科学者たちは「蛟竜」の4Kカメラで撮影された高解像度ビデオを大型スクリーンで分析するのを待っている。「蛟竜」が持ち帰った一連のサンプルは、母船上の「生物・地質実験室」に移送され、中国と外国の科学者たちがサンプルの初期分類、番号付け、撮影を行い、今後の研究用に適切に保管する。

「深海1号」には1台の共有コンピューターが搭載されている。毎回の潜航の後、中国と外国の科学者たちは、その潜航で得た代表的なビデオ映像をこのコンピューターにアップロードする。

 そのほか、海洋水文や環境などの重要なデータ、サンプリングリスト、写真などの重要な資料も同時に共有され、全ての研究者が研究や利用に活用する。

 データを共有した後、中国と外国の科学者たちは、各自の研究分野や専門知識に基づいて、サンプルデータの綿密な分析と解釈を行う。この緊密な協力体制は、作業効率の向上につながるだけでなく、中国と外国の研究者たちの交流も促進させる。

 中国自然資源部の中国大洋事務管理局の鄔長斌(Wu Changbin)局長は、今回の航海の成功は中国の深海の生物多様性と生態系に関する科学的理解を深めただけでなく、世界の海洋科学研究に重要な科学的データを提供することにも貢献したと話している。

 国際連合の下部機関「国際海底機構」は最近の報告の中で、世界の深海研究を推進する中国の役割を高く評価した。

「蛟竜」は今後、インド洋などにおいて2回目の国際協力航海を行い、「深海熱水噴出域」の生物多様性と環境を調査し、多様な深海生物の保護とこの区域の持続可能な利用のための科学的根拠を提供する計画だ。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews