【4月3日 Peopleʼs Daily】「春節(旧正月、Lunar New Yeaer)―中国の人びとの新年を祝う伝統的な社会的慣習」が昨年12月4日、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の無形文化遺産の代表リストに登録された。

 現在リストに登録されている中国の無形文化遺産は44件に上り、これは世界最多である。

 春節は中華民族の第一の祝祭だ。春節には深い文化的蓄積と長い歴史がある。春節は一年の最初の祝祭として中国で3000年間も祝われてきた。中国社会科学院の劉大先(Liu Daxian)研究員は「春節は人類が狩猟や採集から農耕生活へと移行した後に、重要な節目の時を祝う行事となった。『辞旧』(古いものに別れを告げ)、『迎新』(新しいものを迎える)という二重の意味が込められている。1年間の苦労を労い、春節で骨休めをしながら新たな始まりに向けて心身にエネルギーを蓄える。これは古代文明から生まれた一種の知恵であり、人と天地万物の調和という生態学的な意識に合致している」と解説する。

 春節をめぐる中国人の豊かな社会慣習は、より良い生活への憧れを託すもので、中国の人びとの精神的なルーツの深い記憶を伝えている。春節という文化遺産は、目を奪うほどきらびやかで多彩で、最も豊富な含蓄と最も幅広い影響力を持つ無形文化遺産の項目の一つだと言える。これは、そこから派生した多くの行事や習慣からも明らかである。

 北京師範大学の蕭放(Xiao Fang)教授の分析によると、「春節と元宵節(旧暦1月15日)」に関連する無形文化遺産は、不完全だが広範な統計データに基づくと、国家レベルのものが400を超え、省レベルのものは800を超える。そして、それらの無形文化遺産は、主に4つのカテゴリーに分類されるという。

 第一に、伝統的な飲食に関わる無形文化遺産。正月料理は新年で最も楽しみなものだ。北部と南部では異なる正月料理がある。例えば北部では麺など小麦粉食材の加工技法で、山西省(Shanxi)霍州(Huozhou)の名物で様々な縁起の良い形をした正月用の蒸しパン「霍州年馍(Nianmo)」や「聞喜年馍(Wenxi Nianmo)」は、全て春節の美食の文化遺産だ。

 南部では、日本の餅に相当する「麻糍(Maci)」や「年糕(Niangao)」が春節には欠かせない新年の美食だ。これらの作り方、味、食習慣は、中国人の気持ちや知恵を反映している文化遺産である。

 第二は、春節の芸術だ。春節は盛大な伝統芸術の祭典であり、芸術に関連する無形文化遺産は数百に上る。真っ赤な春節の対聯(ついれん、Duilian)、めでたく賑やかな絵柄の「年画(Nianhua)」、耳をつんざく太鼓や銅鑼の音が響く正月のお芝居「年戯(Nianxi)」、奇抜な化粧、獅子舞や竜舞、心地よい管楽器や弦楽器の音色など、どれもが魅力的で人びとを陶酔させる。

 木版の年画は、春節の伝統美術だ。その絶妙な吉祥の色彩と構図、めでたさを表す寓意は、春節の華やかな雰囲気を際立たせる。

 元宵節の「灯会(ランタンフェスティバル)」は、春節芸術の素晴らしい展示物だ。例えば、江蘇省(Jiangsu)句容市(Jurong)の「秦淮(Qinhuai)灯会」、河南省(Henan)洛陽市(Luoyang)の「洛陽宮灯会」、北京市の「北京灯会」などは、全て国家級の無形文化遺産である。

 第三は、春節の娯楽だ。春節の娯楽は主に大衆的な活動で、心身をリラックスさせ、社会的活力を高める文化的な催しがほとんどだ。例えば、「廟会(日本の縁日)」、歌舞、芝居、コントなど豊富な演目の民衆自演の娯楽舞台「耍社火」「游灯会(ランタン祭)」、広東省(Guangdong)の「行花街(迎春の花市)」などだ。
「北京地壇廟会」「秦淮灯会」「長治社火」「広州越秀行花街」はいずれも、人びとを幸福に満ちた気分にさせる人気の高い催し物だ。

 第四は、春節の儀礼行事だ。春節は1年の周期の中で重要な節目であり、人びとは歴史と社会の中で、この特別な節目の時間と空間を最大限に活用し、様々な儀式を生み出してきた。比較的よく見られるものは、中国人が春節に行う祖先崇拝の儀式だ。

 新年に帰郷する人びとの重要な動機には、愛する肉親や親族に会いたいという思いのほかに、遠い祖先に思いを馳せ、懐かしむことがある。春節の風習は、人と人とのつながりを生み出し、人びとの感情や精神的なつながりを深める交流の場となっている。また、家庭や社会の調和と親睦に貢献する文化的な役割を果たしている。

 時代の変遷とともに、多くの春節の儀礼も変化し、新しい形式のものが生まれている。著名な民俗学者の劉魁立(Liu Kuili)氏は「チャットアプリ『微信(ウィーチャット、WeChat)』の紅包(お年玉)や年賀のショートビデオなどの出現は、現代のライフスタイルの変化に伴う自然な流行であり、これらも伝統的な民俗習慣の継続である」と指摘する。

「私は幼少の頃は地方の小さな都市で育った。年越しの時に、人びとは家々を回ってお祝いのあいさつをした。どの家も玄関に郵便受けが置いてあり、私は毎朝早起きして郵便受けに届いた新年の挨拶状を読んだ。それは私の特別な楽しみだった。今では、『微信』やショートビデオを使った新しいタイプの新年あいさつになっている。また、田舎に住む家族が都会に出てきて一緒に春節を過ごすという従来とは『逆バージョン』の年越しや旅行に出かけて旅先で新年を祝うという新しいトレンドも見られる。しかしこれらも本質的にはやはり家族や親族と集うことが目的だ。春節の習慣がどう変化しようとも、人と人との関係から得られる幸福感という核となる部分は変わらないだろう」、劉氏はこのように見ている。

 蕭放教授は「春節がユネスコの無形文化遺産に登録されたことは、中国人にとって誇りであり、世界への贈り物である。春節が持つ平和の理念、家庭の価値観、実り多い未来がずっと続くようにという願いは、中国と人類が共有する価値観であり、精神的な宝である」と述べた。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews