【3月24日 Peopleʼs Daily】デジタル化したメーカーの生産コストが大幅に削減され、受注量も急速に増加している。デジタル技術がメーカーを変革したのだ。この変化はどのようにして起こったのか? そのメーカーの現場に入り、原材料から完成品までのデジタル生産の過程を見てみよう。

「ピッ、ピッ」午前9時30分、江蘇省(Jiangsu)溧陽市(Liyang)の精密設備・検測機器メーカー「江蘇順科新能源技術」の工場では、材料受入れ担当者がデジタル端末で入庫伝票をスキャンし、10箱の回路基板を無事に受領した。「確認ボタン」を押すと、自動搬送台車が寄って来て、回路基板を「ピックアップ」し、貨物エレベーターに「乗せ」、製造ラインの入荷材料エリアまで運ぶ。そこでは、回路基板の到着を待つ隔離板(separator)とアルミ棒とが「待機」している。

 回路基板、隔離板、アルミ棒は、新エネルギー車のバッテリーパックの重要部品「セルコンタクティングシステム(Cells Contact System)」の主要な材料だ。

 同社の運営総監・鄧鋼(Deng Gang)さんは「このパーツには、品質と納品効率の両面で高い要求があり、15年間の製品トレース可能期間を要求する顧客もいる」と話す。

 生産品質と効率を向上させるため、同社の親会社・「順科智連技術」は2022年、倉庫管理と生産管理プロセスのデジタル化を決断し、産業用インターネットプラットフォーム企業「COSMO Plat(卡奥斯数字科技青島)」に相談を持ち掛けた。

 材料入荷エリアでは、品質検査員が入荷した原材料の外観をサンプリング検品している。その後ろにある3000平方メートルの倉庫は、緑、赤、黄色の3色のエリアに分かれている。品質検査に合格した原材料は自動的に緑の倉庫に保管され、不合格品は赤の返品倉庫に保管され、黄色エリアの原材料は技術専門家の二次判定を待っている。

 原材料が倉庫に入ると、ブロック番号と位置番号が割り当てられる。「COSMO Plat」の産業用ソフトウェア・ソリューションマネージャーの王合傑(Wang Hejie)さんは「もし手作業で入出荷の伝票を処理する場合、材料のピックアップに少なくとも30分、多い時には数時間かかることもある。それが今では15分で完了する。デジタル管理で、需要と供給の正確なマッチングが実現し、在庫回転率が向上した」と説明する。

 午後1時30分、材料の「持ち出し」時刻がきた。オペレーターの何裕明(He Yuming)さんは「リアルタイム生産指示書」に基づいて、ワンクリックで倉庫管理システムを開き、所定の材料を再び自動搬送台車に乗せ、できるだけ早く自動生産ラインに運ばせる。

 彼は生産ラインの上に黒い色をした隔離板を設置し、最初の工程であるアルミ棒の取り付けを開始する。2台の取り付けロボットが供給容器からアルミ棒を取り出すと、隔離板の所定の位置まで素早く「アーム」を回し、完ぺきな連携で取り付け作業を始める。そして3分後には53本のアルミ棒の取り付けが完了した。機械の前の視覚化スクリーンを見れば、部品の取り付け漏れや取り付け不良の有無が確認できる。

 次はレーザー溶接工程だ。鄧剛総監は「回路基板とアルミ棒は小さなニッケル片で接続される。これが最も難しい工程だ」と言い、記者にニッケル片を観察するよう促した。ニッケル片は小指の爪ほどの大きさしかなく、その上に付けられた六つの梅花状の点の直径はわずか1.5ミリメートル以下だ。

 もし自動溶接ヘッドだけを使用した場合、熟練工でも溶接不良や二重溶接などの問題を発見するのが難しく、製品が完成するまで正常に機能していないことに気づかない可能性もあるという。デジタル化により、標準パラメーターを溶接機に入力して、リアルタイムで生産データと比較することが可能になった。両データの差異が1%を超えると、機械が自動的にアラームを発する。これで初回合格率が大幅に向上した。

 また、可視化ボードで、作業指示の進捗状況や完成品の合格率などのデータが5分ごとに更新され、生産管理の全体像が一目瞭然に把握できるようになった。

 レーザー溶接後、電気性能検査、X線非破壊探傷、人手による全数検査などの検査プロセスを経て、「セルコンタクティングシステム」の全ての生産工程が完了する。

 鄧鋼総監は、出来上がった「セルコンタクティングシステム」を1個手に取ると、デジタル端末でスキャンした。そうすると、材料から製品に至るまでのすべての情報が表示された。材料の供給者や納入ロットまで遡って追跡することが可能なのだ。

 彼は「スキャンしたのは『完成品コード』だ。これはまさに完成品の『IDカード』に相当する。これで品質問題をタイムリーに処理することができる」と説明する。そして全てのデータは15年間クラウドに保存されるという。

 デジタル化がどれほど重要なのか?データがすべてを物語る。「製品の初回合格率は98.8%で、業界平均を3.8ポイント上回っている。生産スケジュールはシステムにより自動的に作成される。その正確性と時間的正確度は100%だ。それらの相乗効果で、生産コストは業界平均と比較して7.5%削減された・・・」と鄧鋼総監はデジタル化の効能を列挙する。

 23年4月にデジタル化を導入して以来「江蘇順科新能源技術」は4つの新しい主要顧客を獲得し、月間受注数量は20%増加しているという。昨年の売上高は1億元(約20億5900万円)を超えた。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews