【2月10日 AFP】マダガスカル議会上院は7日、児童レイプ犯の物理的・化学的去勢を可能にする法案を可決した。同法案は今月、下院も通過しているが、法律として成立するには、最高憲法院に合憲と判断され、アンドリー・ラジョエリ(Andry Rajoelina)大統領が署名する必要がある。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は「残酷で非人道的、尊厳を傷つける」と非難。去勢では小児性愛者の問題は解決しないとして、同法案を撤回するようマダガスカル政府に求めた。

 だが、ランディ・ムボラティアナ・ランドリアマナンテナソア(Landy Mbolatiana Randriamanantenasoa)法相は9日、AFPの取材に対し、「わが国は主権国家であり、法律を改正するあらゆる権利を有する」「レイプが再び急増しており、行動する他なかった」と述べた。人口約2960万人の同国では昨年、未成年者に対するレイプが600件報告されたという。

 これまで、児童に対するレイプの法定刑は最低で禁錮5年だったという。

 AFPが確認した法案は、10歳未満の子どもをレイプした場合は物理的去勢、10歳以上13歳未満の子どもの場合には化学的または物理的な去勢、13歳以上18歳未満の子どものレイプした者には化学的去勢を認める内容となっている。

 アムネスティの同地域の責任者ティグレ・チャグタ氏は、合法的な去勢は「拷問や虐待を禁止するマダガスカル憲法の条項」や国際人権基準に反すると批判した。

 アムネスティは「レイプ事件は依然として通報されない事例も多く、被害者やその家族が報復や汚名を着せられる恐怖や、司法への不信から加害者が罰せられないこともしばしばある」と指摘した。

 アムネスティの同国のアドバイザーも、去勢される人物に焦点を当てていないと非難。冤罪(えんざい)もあり得ると指摘した。

 一方、「沈黙を破る女性(Women Break the Silence)」運動のジェシカ・ロロニリナ・ニボセヘノ氏は、「家庭内で穏便に解決」されている事件も多く、マダガスカルの「レイプ文化」に対する「抑止力」になり得ると擁護した。(c)AFP