【4月16日 AFP】アフリカ・ジンバブエで、旧宗主国・英国のスコーンが国民食として親しまれている。首都ハラレでは、高級店からスラムの屋台まであらゆる場所で売られている朝食の定番だ。

 歌手やタレントとしても活躍する人権活動家のニアリ・マシャヤモンベ(Nyari Mashayamombe)さんは、ハラレのベルグラビア(Belgravia)地区にある外庭付きのレストランを後にしながらこう言った。「私たちはスコーンが大好き。このスコーンは英国のものではなく、私たちのもの、この国のもの」

 マシャヤモンベさんいわく、生地の密度が高いのにふんわりと軽い口当たりのジンバブエのスコーンは、異文化が混じり合ったことから生まれた。「このレストランのように高級店では、スコーン1個が6ドル(約800円)くらいするが、それだけの価値はある」

■高級スコーンと庶民のスコーン

 数キロ離れたハラレ最古の地区ムバレ(Mbare)の市場では、スコーンは正午過ぎには売り切れてしまう。

 労働者階級でにぎわうムバレのパン店は夜明けとともにオープンする。タワンダ・ムチャクレバさん(26)は2平方メートル程度の狭い作業場で毎日、200個のスコーンを作っている。値段は1個25セント(約30円)だ。

 イーストの香りが漂う蒸し暑い店内では、子どもを背負った妻がバター塗りや皿洗いを手伝っている。

 個人客の他に、ムチャクレバさんのスコーンを仕入れて売っている小さな食料品店の店主が10個、20個と買い求めに来る。

 ハラレの高級ティールーム「ボトムドロワー(Bottom Drawer)」の調理を担当するベロニカ・マコンセさん(46)に、ムバレから持って行ったスコーンを試食してもらったが首を振り、「牛乳ではなく水を使っている」と不満を漏らした。

 マコンセさんは自家製のバターミルクをスコーンに使っている。温度と酸度を管理し、本物のバターだけを使うことで味に深みと柔らかさが出るという。

 マコンセさんの上司、サラ・マクミランさん(53)は子どもの頃に食べたスコーンを懐かしむ。今はもうないハラレの2店が、当時はジンバブエ一のスコーンの座を競っていた。

 貧困にあえぐこの国で、スコーン人気が衰えない理由は簡単だとマクミランさんは言う。「とても食べ応えがあって、値段も手頃だからだ」 (c)AFP/Gersende RAMBOURG