ロシア語の使用制限を支持 「共存は無理」 著名ウクライナ人作家
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【2月15日 AFP】ウクライナのロシア語作家、アンドレイ・クルコフ(Andrey Kurkov)氏(60)はAFPのインタビューに応じ、ロシアによる侵攻への懸念が強まる中、ウクライナがロシア語の使用を制限したことを支持する立場を表明した。
日常生活をユーモアを織り交ぜながら描いたクルコフ氏の不条理小説「ペンギンの憂鬱(ゆううつ、Death and the Penguin)」は、30以上の言語に翻訳され、世界的なベストセラーとなった。物語は、ソビエト連邦崩壊後、新聞向けに訃報を書く仕事をしているさえない作家を主人公にしている。
ウクライナでは先月、ロシア語での出版に際し、ウクライナ語版を同部数出版することを義務付ける法律が施行された。ニューススタンドでは、販売品の半数以上がウクライナ語の出版物でなければならない。
クルコフ氏は「ウクライナ、ロシア間の現在の文脈の中では、ロシア語の特権的地位について話を進めるのは不道徳だ」と、ロシア語で語った。
旧ソ連・レニングラード(Leningrad、現サンクトペテルブルク<St. Petersburg>)出身のクルコフ氏は、なまりのないウクライナ語を話す。ウクライナ語の映画脚本や児童書もある。ただ母語はロシア語で、ほとんどの作品の使用言語はロシア語だ。
「私はロシア語で物を書き、テレビではロシア語かウクライナ語を話す。全く問題はない」「今のところ、言語政策は理にかなっている」
ただクルコフ氏は、新法はウクライナ社会において自然な成り行きだとみる。学校でロシア語が教えられなくなったことも問題ないと語る。「次世代のウクライナ人はバイリンガルであっても、ロシア語を書けなくなっているだろう」
旧ソ連は、15の構成国の学校でロシア語教育を強制していた。
「ウクライナのロシア化は70年間に及んだ」「われわれはウクライナが元の姿に戻る過程を目撃している。それには50~100年かかるだろう」
■集団vs個人主義
ロシアによるウクライナ侵攻の脅威については、人生における過酷な現実の一こまだが、ウクライナを恒久的に変えるものではないと語る。
「戦争は起きるかもしれないが、独立が完全に失われるわけではない」
ウクライナとロシアはあまりにも根本的に異なっており、共存はできないと考えている。「ロシアは帝政だったり、一党独裁だったりする」が、「ウクライナには政党が400ある」と指摘。ロシア人は「集団主義」に基づいて、ウクライナ人は「個人主義」で動くと話す。
■戦争慣れ
クルコフ氏は新作「グレー・ビーズ(英題、Grey Bees)」で、親ロシア派が実効支配する東部の養蜂家の物語を描いている。東部紛争では、これまでに1万4000人以上が死亡したとされる。
東部紛争がウクライナ人の決意を固めたと、クルコフ氏は信じている。「精神を病んだ者も、パニックになった者もいない。誰もがこれまで通りの生活を続けている」
「ウクライナ国民が真に衝撃を受けたのは、2014年3月、ロシア議会が外国領土への侵攻(クリミア半島併合)を圧倒的多数で承認したのを目の当たりにしたことだ」とクルコフ氏。
「国民は今日、戦時下にあるという事実に慣れている」 (c)AFP/Olga NEDBAEVA