【10月24日 AFP】イタリア首都ローマのフラミニオ墓地(Flaminio Cemetery)の108番区画には、木製と金属製の小さな十字架が多数あり、それぞれに女性の名が書かれている。いずれも合法的に中絶手術を受けた女性の名前だ。

 この秘密墓地に、手術を受けた女性の同意なく中絶された胎児が葬られ、女性の名前を書いた十字架が立てられているのを、当事者の一人が発見した。

 女性権利団体と当事者らは憤りをあらわにし、個人の医療的判断を公開した事実を激しく非難した。

 十字架に名前が記されていた女性の一人、フランチェスカさん(姓は非公開)は、妊娠6か月を迎えていた昨年9月、胎児の心臓に深刻な欠陥があることを知り、中絶手術を受けることを決めた。

 フランチェスカさんは術後、胎児はどうなるのかと病院に3度尋ねたが、答えはなかった。後に墓があることが分かり、しかも自身の信仰と一致しない十字架が立てられているのを目にし、衝撃を受けたという。

「十字架に書かれた自分の名前を見て、私にとっては懲罰のしるしだと思った」「傷口を再びこじ開けられた気がした」と打ち明けたフランチェスカさん。「(手術を受けた)施設に裏切られたと思った」

 イタリアでは1978年以降、妊娠後90日以内の中絶は合法とされている。しかしカトリック教徒が多数を占める同国では、婦人科医の7割が中絶の施術を拒否しており、地域によっては手術を受けるのが困難という現状がある。

 女性権利団体「ディフェレンツァ・ドンナ(Differenza Donna)」によれば、この秘密墓地をめぐり、ローマ市内各地にある病院で中絶手術を受けた女性約100人から連絡があったという。

 活動家らは検察当局に対し、捜査の開始を求めて請願を行っている。(c)AFP/Giuliana Ricozzi