【8月5日 AFP】今から10年前、南米チリ・アタカマ(Atacama)砂漠の地下に2か月以上にわたって閉じ込められ、生還した鉱山労働者33人は連帯と希望のシンボルとなった。

 奇跡の脱出として世界中のメディアの注目を集めた33人は今、トラウマや病気に悩まされたり、嫉妬や苦い思いによって分裂したりしている。

 2010年8月5日、昼食の直後だった。チリ北部のサンホセ(San Jose)鉱山で落盤事故が発生。当時19~63歳だった労働者33人が閉じ込められた。

 操業開始から約1世紀たつ古い鉱山の最下層、地下600メートルで生きていた彼らを見つけ出すまでに17日間かかった。しかしそこから彼らを救出するには、さらに52日間かかった。細い穴を通って無事引き揚げられる労働者たちを、世界中の人々がテレビで見守った。

 危機と飢餓を強い連帯感で乗り越えた鉱山労働者たちはたたえられ、英雄とあがめられた。無償の旅行を提供されたり、チリの実業家からそれぞれ1万ドル(約110万円)を贈られたりした。米ハリウッド(Hollywood)では俳優アントニオ・バンデラス(Antonio Banderas)さんの主演で、『チリ33人 希望の軌跡(The 33)』として映画化された。

 だが、AFPが今回インタビューしたうちの何人かは、そうした幸福な時間は長くは続かなかったと振り返った。この10年、それぞれたどってきた道は違うが、一つだけ共有しているものがあった。それは「苦い思い」だ。