【7月27日 AFP】国連人道問題調整事務所(OCHA)は26日、スーダン・西ダルフール(West Darfur)州で武装した男たち約500人が町を襲い、住民60人以上が殺害されたと発表した。同地では先週から、複数の集落が襲撃に遭っているという。アブダラ・ハムドク(Abdalla Hamdok)首相は同日、治安部隊を派遣する方針を明らかにした。

 首都ハルツームのOCHA事務所によると新たな襲撃は25日午後、西ダルフールの町マステリ(Masteri)で起きた。マサリット(Masalit)人の住民を標的に、民家や市場が略奪の被害を受けたという。この襲撃事件を受け、地元住民約500人がより手厚い保護を求めて当局に対する抗議デモを行った。

 AFPの取材に地元住民らが語ったところによれば、内戦で荒廃した西ダルフール地方では24日にも村が武装集団に襲われ、農耕地に数年ぶりに帰還した民間人20人が殺害される事件があったばかり。

 ハムドク首相は26日、ダルフールの女性代表団と面会した後、「民間人と農繁期を守る」ためダルフールに軍と警察からなる治安部隊を派遣すると表明した。

■相次ぐ襲撃、内戦と土地争いが背景に

 貧しいダルフール地方では2003年、少数民族の蜂起をきっかけに、少数民族の武装組織と政府軍や政府側民兵組織が内戦に突入。当時のオマル・ハッサン・アハメド・バシル(Omar Hassan Ahmed al-Bashir)大統領政権は焦土戦を繰り広げ、30万人が死亡、250万人が避難民となった。バシル大統領に忠誠を誓うアラブ系放牧民の民兵組織「ジャンジャウィード(Janjaweed)」は、特に恐れられた。

 バシル氏は昨年、大規模な反政府デモを受けて失脚。以降、ダルフールでは暴力行為が下火になり、現地の武装組織など9つの反政府勢力でつくる連合体が今年1月、内戦終結に向けた合意文書に署名した。2か月前には政府の推進する避難民の帰還計画が合意に至り、7〜11月の種まき時に合わせて農耕民族が元いた土地に戻り始めている。

 だが、現地情勢に詳しい専門家アダム・ムハンマド(Adam Mohammad)氏によると、流血の争いは特に土地をめぐって今も続いている。内戦により農民らが避難した後、遺棄された農地や村に遊牧民族が定住しているためだ。

 最近相次いでいる襲撃は、アフリカ系の農耕民族のコミュニティーが標的となっており、アラブ系遊牧民族との土地争いが背景にある。(c)AFP