彼には手を洗う場所があるのだろうか。 
私にはある。家があって家族がいる。清潔な洗面もごはんもある。感染しないための情報を得ることも可能だ。 
この写真は新型コロナウィルスによるロックダウン発令中、ロンドンの道端に座り込むホームレスの人の姿である。「コロナにかかるより、今日を生きるお金がないことの方が怖いんだ。」 ある記事でホームレスの人がこう答えていた。 
社会的に孤立する彼らは、コロナに関する情報がない上に、予防する術もない。 そして私たちとは違う恐怖に怯えている。
彼らに罵声を浴びせたり、自粛疲れを嘆いたりする若者たちの声は現代社会の本質を捉えることも解決に導くことも出来ない。 
弱者を見捨てない社会。隅々までセーフティネットが行き届いたシステム作り。これからを担う私たちがあと少しだけ思いやりを持つことで、強く豊かな世界を作れるということをこの写真が教えてくれる。
[立教大学 岩田 香乃]