防護服に身を包んだ女性。彼女はスペインで新型コロナウイルスと戦う医療従事者の一人である。彼女の顔の半分はマスクで覆われていて、その表情をはっきりと伺い知ることはできない。しかし、唯一晒された彼女の目には疲労の色が見て取れる。新型コロナウイルスの感染拡大からおよそ3ヶ月、最前線で働く医療従事者たちの身体的、精神的疲労はおおよそ私たちが考えうる範囲には収まらない。日々増え続ける新型コロナウイルスによる死者数、医療崩壊が叫ばれる今、絶望が滲む目元と祈るように固く握られた彼女の両手に胸が痛んだ。この写真は、過酷な医療現場の現実を静かに訴えかけている1枚である。
[獨協大学 白旗 優帆]