この写真はブラジルで撮影されたもので、2人はコロナウイルスの犠牲になった祖母を悼んでいる。2020年5月の時点で世界全体で約27万人がコロナウイルスによって亡くなった。そのほとんどが死後、遺族の感染を防ぐため、葬儀を行うことも最期の対面をすることも許されない。ただ防護服を着た関係者によって運ばれて土葬、火葬されるだけである。
私はこの現実を知り、改めてコロナウイルスの無慈悲さを痛感した。感染を阻止するためのやむを得ない策だと分かっていても、お別れの言葉を掛けられないのはあまりに無念で悲しい。感染拡大の裏にはそんな遺族が大勢いること、彼らの悔しさや嘆きを忘れないためにこの写真を選定した。
[東京女子大学 椎名 いずみ]